プロレス界のスーパースター武藤敬司(60)が2月21日に東京ドームでの内藤哲也戦で引退する。新日本プロレスに入門した1984年10月5日のデビューから全日本プロレス、WRESTLE―1、プロレスリング・ノアと渡り歩き常にトップを驀進したカリスマ。さらに化身のグレート・ムタでは全米でトップヒールを極めるなど世界で絶大な人気を獲得した。スポーツ報知では38年4か月に及ぶプロレス人生を「完全版さよならムーンサルトプレス伝説」と題し1月14日から連載中。37回目は、現役最後のインタビュー【中】ラストマッチで禁断のムーンサルトプレスを舞うか。また、報知では18日からオールカラー20ページと特大ポスターが付いたタブロイド新聞「武藤敬司 引退特別号」(税込み480円)をコンビニエンスストアなどで発売中です。(取材・構成 福留 崇広)
―最後の試合で戦う内藤選手は、武藤さんが築いてきたプロレスを受け継ぐ度量があるか。
「受け継ぐ、受け継がないとかなんて関係ないよ。プロレスだって受け継ぐよりは次の時代なり変化していかないといけないわけだからさ。だから内藤がオレの後継者とかそんなものじゃないよ」
―内藤選手に伝えたいものは?
「ないよ。ないけど、内藤も95年の10・9でオレと高田(延彦)さんの試合を見てプロレスラーになるんだって決めたらしいよ。だから、今度はこの内藤対武藤敬司戦を見て『オレも内藤みたいなレスラーになりたい』っていう若者とかちびっこが増えたりしたらいいなって思ったりするよ。それが継続というか。継続は力なりというか。プロレス界が良くなっていく方法のひとつだよな」
―引退試合で両膝の人工関節手術後にドクターストップがかかった「ムーンサルトプレス」をやるのか?
「今のオレだったら、(主治医の)杉本和隆先生から『ムーンサルトはダメ』って言われているのが余計にダメになる気がする」
―それは、なぜ?
「グレート・ムタのラストマッチ(1・22横浜アリーナ)で両足のハムストリングを肉離れしちまってさ。回復しないんだよ。筋肉を痛めているから、ムーンサルトなんかやっちまったら筋肉が衝撃を守ってくれないじゃん。両膝がマットにたたき付けられた時にハムストリングの筋肉が膝を守れなかったら直に衝撃が来ちゃうからな。状況はヤバイと思うよ」
―はい。
「とにかく、変な話、トイレの便座に座るのが痛くて嫌なんだよ。ちょうど座った時に便座にハムストリングの部分がぶつかるからね。だから用を足すのもちょっとおっくうになって面倒くさくなってるんだよ。だから便秘っぽくもなるしさ。細かいこと言うと大変なんだよ、今」
―それほどまでに重傷なんですね。
「毎日、夜が明けるのが恐ろしくてしょうがないよ。夜が明けてハムストを触ると痛くて『まだ、ダメだよ』って、朝起きてからすぐに憂鬱だよ。急激に治ったりしねぇもんだなって思ったりさ。練習とか努力すれば良くなるものじゃないからさ。動いたらダメになるから練習も満足にできないし。ストレスがたまるよ」
(続く)