武藤敬司、58歳で「プロレスリング・ノア」電撃入団…連載「完全版さよならムーンサルトプレス伝説」〈35〉

スポーツ報知
ノア入団を発表した武藤敬司(左から3人目。2021年2月15日)

 プロレス界のスーパースター武藤敬司(60)が2月21日に東京ドームでの内藤哲也戦で引退する。新日本プロレスに入門した1984年10月5日のデビューから全日本プロレス、WRESTLE―1、プロレスリング・ノアと渡り歩き常にトップを驀進したカリスマ。さらに化身のグレート・ムタでは全米でトップヒールを極めるなど世界で絶大な人気を獲得した。スポーツ報知では38年4か月に及ぶプロレス人生を「完全版さよならムーンサルトプレス伝説」と題し1月14日から連載中。35回目は、58歳で「プロレスリング・ノア」電撃入団。また、報知では18日にオールカラー20ページと特大ポスターが付いたタブロイド新聞「武藤敬司 引退特別号」(税込み480円)を発売します。(取材・構成 福留 崇広)

 2020年4月1日に活動停止となった「WRESTLE―1」。デビュー以来、初めて団体に所属せずフリーとなった武藤が主戦場に選んだのが「プロレスリング・ノア」だった。

 この時、武藤は24歳から悩まされてきた両膝のケガから解放されていた。18年3月に東京・足立区の苑田会人工関節センターで人工関節手術などで世界的権威の杉本和隆病院長により「人工関節」設置手術を行い、1年半の長期欠場を経て19年6月に復帰したのだ。

 人工関節手術に至る詳細な経緯と秘話は、1月12日に徳間書店から刊行されたノンフィクション「【完全版】さよならムーンサルトプレス 武藤敬司『引退』までの全記録」で描かれているがリハビリを経た武藤は、日常生活にまで支障を来していた膝の激痛から解き放たれ、コンディションは、近年にない好調な状態だった。

 「W―1」は解散したが、武藤は、フリーとして主にノアへ参戦した。そして、重大な決断を下す。潮崎豪が持つGHCヘビー級王座への挑戦だ。

 2021年2月12日。ノアが11年ぶりに開催した日本武道館で逆転のフランケンシュタイナーで潮崎を破り武藤はベルトを奪った。サプライズは続いた。戴冠から3日後の2月15日、ノア入団が発表されたのだ。ベルトを奪ったとはいえ、58歳の新入団は異例で2年契約を武藤はノアと結んだ。

 ノアは2000年8月に全日本プロレスを離脱した三沢光晴が旗揚げした。全日本に所属した小橋建太、秋山準ら数多くの選手、社員も三沢と行動を共にし日本テレビが放送するなどの支援もありファンから絶大な支持を受けた。2000年代前半は、新日本を追い抜きプロレス界で最も人気がある団体は間違いなくノアだった。

 しかし、日本テレビが地上波での中継から撤退、09年6月13日に三沢が試合中の事故で46歳の若さで急逝し苦境に立たされた。16年11月には会社を売却し社名が「ノア・グローバルエンタテインメント」に変わり、19年1月には広告代理店「リデットエンターテインメント」が買収。そして20年1月にIT大手「サイバーエージェント」が買収し、DDT、東京女子プロレスなどと経営統合した運営会社「サイバーファイト」を設立し現在に至っている。

 こうした激動の中で武藤を「ノア」の所属選手としてオファーしたのが武田有弘氏だった。武田氏は、武藤が全日本へ移籍した時に新日本を退社し行動を共にした。その後、新日本へ復職するなどのキャリアを経て、19年から「リデット体制」になったノアで社長を務めた。その後、「サイバーエージェント」傘下となり1年を経たころ、武藤も「WRESTLE―1」が活動停止となりフリーとなった。こうした流れの中で武田氏は、武藤に入団をオファーした。

 「ノアに入って分かったことは、多くの将来、有望な選手がいたことなんです。だからこそ大きな壁になる存在が欲しかったんです。それには武藤さんが必要でした」

 さらに、こう説明した。

 「武藤さんは、フリーになっていろんな団体から引っ張りだこでいろんな団体に出たと思うんです。ただ、そうなると我々として武藤さんに参戦のオファーはしづらくなります。ひとつの団体でしっかりやっていただかないと我々にとって意味がないですから。例えば今回の引退試合もいろんな団体に出ながら最後だけノアで引退試合をやって欲しいと言われても、そこは我々がやるビジネスじゃなかったと思います。ですから、武藤さんも我々も一緒にビジネスを考えましょうという方がメリットがあったんです」

 武藤にとってノアの親会社がIT大手「サイバーエージェント」だったことも大きかっただろう。「ABEMA」を中心に多角的なメディアを持つ同社への信頼感と安心感があったからこそノア入団を決断した。武田氏もこう証言する。

 「武藤さんもノアがサイバーエージェント傘下だったからこそノアへの入団を決めたと思います。結果、東京ドームで引退試合ができますし、PPVで生中継できることになりました。その辺の嗅覚はさすがです」

 ノアではGHCヘビー、タッグを奪取し、清宮海斗らこれからの団体を担うレスラーの壁となりリングを活性化させた。そして、残すは2・21東京ドームの1試合となった。次回からこの連載の最終回まで引退試合が目前に迫った武藤をインタビュー。ラストマッチを内藤哲也に選んだ理由、今の心境などを尋ねる。(敬称略。続く)

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