小出恵介「成し遂げられた時が完全復帰」 目標は地上波のテレビドラマ出演 活動再開から2年半

スポーツ報知
「ミニシアターならではの作品なので、味わいを感じてほしい」という小出恵介(カメラ・竜田 卓)

 俳優の小出恵介(38)が、主演映画「銀平町シネマブルース」(城定秀夫監督)でさすらいの映画監督を好演している。小さな映画館を舞台にした群像悲喜劇。18年10月に就労ビザを取得して渡米し、約2年間、ニューヨークで演技レッスンに励んだ。20年夏に芸能活動を再開し、今作は映画復帰2作目。役に懸ける思いや米国での体験談、今後の夢などを語った。(加茂 伸太郎)

 スクリーンに帰って来られる。小出は「もう一度、お芝居をさせていただく機会を与えてもらえる」と胸を熱くした。

 4年ぶりに主演したABEMAドラマ「酒癖50(フィフティ)」のクランクアップ後にオファーが届いた。撮影順と公開順が「Bridal,my Song」(22年)と入れ替わったが、当初は今作で映画復帰する予定だった。

 「活動を再開してドラマ、映画、舞台…全ての媒体でやることを目標にしているので、それがかなううれしさがありました」

 脚本は映画「れいこいるか」「神田川のふたり」の、いまおかしんじ氏。小さな町の映画館を舞台に群像悲喜劇が描かれる。演じたのは人生を頓挫し、青春時代を過ごした町に帰ってきた映画監督。自身も高校時代、自主映画製作に熱中し、監督・主演作「妄想族」を製作。重なる部分も多かった。

 「バスケットボール部を引退後、寄り添っていたのが映画でした。この世界に飛び込んだ20年前の自分の残像の力を借りて挑みましたね。そこは感情に抗(あらが)わず、感じたままに。考えすぎないようにはしました」

 吹越満(57)、宇野祥平(44)ら先輩俳優陣との久しぶりの共演は心地よく、懐かしくも感じた。「言葉を交わすわけじゃないけど、一緒に過ごしていると、どれだけ演技を愛しているかが分かるんです。映画を愛している者同士の周波数というか。映画オタクか俳優か、錯覚してしまうぐらいの熱量が現場にはあって。純粋にいいな~と。主演だから引っ張るというよりは、自分なりに寄り添って付いていく感じでした」

 18年10月に米ニューヨークに移住した。語学学校と並行して、2年近く演劇学校に通った。基礎教養を学んだ後、米国の著名な演技教師サンフォード・マイズナーによる独自の練習方法「マイズナーメソッド」を学んだ。

 「受講生は年齢も性別も国籍もバラバラ。日本で演劇、演技を学ぶ人たちとは違う感覚で面白かったですね。演技のうまい下手って日本は感覚的だけど、向こうはテクニカル。演技に対する深い哲学があって、学術的に分析している。具体的で方程式に近いかな」と説明。「長く続けていると、(演技に対して)分からなくなる瞬間、悩む時もある。受講したことで視座を高められました。引き出しは確実に増えたので、その部分を大切にしたいです」

 高いハードルを設定するからこそ、休止前の演技の感覚には100%戻れていない。まだまだ試行錯誤の日々。「出せたーっ!という感覚はまだないです。思っているイメージとは全然(かい離している)」と悔しがる。

 「肘や肩をケガして、リハビリ明けの投手のような感覚です。4年間空いたので、どうしても慣れるまでに時間がかかるんだなって。『酒癖50』の時は演技に対して抵抗感がありましたから。シンプルに不慣れ、ガチガチになっていました(笑い)。今はそれが消えて慣れてきて、体が動く。やっとここからかなという気持ちです」

 米ニューヨークで知り合った年下の一般女性と、1月に現地で結婚。生涯の伴侶を得て30代ラストイヤーを迎える。どんな未来を描くのか。しばらく思い悩んだ後、丁寧に言葉を紡いだ。

 「地上波のテレビ(ドラマ)に戻りたい、という大きな目標があります。自分に何ができるか分からないし、どのぐらいかかるかは分からないけど、目標を達成するために向き合っていきたい。成し遂げられた時が本当の意味での完全復帰になるかなと思います。その部分は欠かせない。頑張っていくだけですね」

 強い決意と覚悟と胸に、俳優人生を歩んでいく。

 ◆小出 恵介(こいで・けいすけ)1984年2月20日、東京都出身。38歳。父親の仕事のためインドで幼少期を過ごす。慶大文学部卒。2003年「偶然にも最悪な少年」で映画初出演。05年映画「パッチギ!」、ドラマ「ごくせん」で話題に。09年「風が強く吹いている」で映画初主演。主な出演作にドラマ「JIN―仁―」「梅ちゃん先生」、映画「シュアリー・サムデイ」、舞台「虹とマーブル」。175センチ。血液型A。

 ◆銀平町シネマブルース 青春時代を過ごした町に帰ってきた一文無しの青年・近藤(小出)。ひょんなことから映画好きのホームレス(宇野祥平)と、小さな映画館の支配人(吹越満)に出会い、そこでバイトを始める。同僚や老練な映写技師、個性豊かな常連客と出会い、かつての自分と向き合い始める。99分。

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