今年、放送50周年を迎える「ウルトラマンタロウ」。ウルトラの父、母の実の子供、という設定で「ウルトラ兄弟」「ウルトラファミリー」という概念を打ち出し、ネーミングを含め、親しみやすい印象で当時の子供たちから支持されました。スポーツ報知では40周年時の2013年、主演・東光太郎を演じた篠田三郎(74)を取材。撮影当時の思い出や作品への思いを聞きました。今回、このインタビューをWEBのみ5回に分けて再掲載します。タロウとの久々のツーショットも必見です。
(毎日正午更新。文中敬称略)
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「ウルトラファミリー」の概念が確立された作品だけに、過去に登場したウルトラヒーローがそろって客演する【注1】こともあった。ハヤタ(黒部進)、モロボシ・ダン(森次晃嗣)、郷秀樹(団次郎=現・時朗)、北斗星司(高峰圭二)がタロウのために地球に集合。協力して怪獣や宇宙人を倒した。
「先輩たちが出る時は、緊張がありました。こういう話の時は真船禎監督【注2】が撮ることが多かった。撮った作品自体は少ないですが、割合に長回しで撮影したり、印象に残るものが多かったですね。演技指導もしてくれたし、印象に残っています」
最終回、「さらばタロウよ! ウルトラの母よ!」で、父・白鳥船長を怪獣のために失い、自暴自棄になる健一。光太郎は、そんな健一に真の強さを見せるため、あえてタロウに変身せず、宇宙海人バルキー星人を倒した。タロウに頼らず、自分自身の力で生き抜くことを決めた光太郎は、「ウルトラバッジ」をウルトラの母に返し、一人、雑踏の中に消えていく―。
その後、長い年月が経ったが、篠田がその後の「ウルトラマンシリーズ」に「東光太郎」として再登場したことは一度もない。タロウの方は、「ウルトラマンシリーズ40周年記念作品」の「ウルトラマンメビウス」(06年~07年放送)【注3】などに登場し、今も我々に雄姿を見せてくれているが、光太郎は雑踏に消えたままだ。
そのため、ファンの間では「俳優として確固たるキャリアを築いた篠田が、『―タロウ』のことを封印してしまったのではないか」などと言われていた。真相はどうなのだろうか?
「こうやって『―タロウ』のことをお話ししているんですから、封印したとか、そんなことはないんですよ。これまでも折に触れて話す機会もありましたから。俳優として様々な作品に出演して、いろいろな役をやってきました。『東光太郎』は、その中の一つではありますが、むしろ、思い入れは強いんです。以前、ウルトラマンの映画が製作された時、監督さんから『出演してくれませんか』と丁重な手紙をもらったことがあるんです。でも、『お断りします』と伝えました。随分、時間も経っていますし、生意気な言い方ですが、『東光太郎』は、自分の青春の良き思い出として取っておきたい―と思っています。ですから、今後も演じることはない…そう思っています」
大都会の雑踏の中に消えていった光太郎は、今、どこで、どうしているのだろうか?
「そうですね…僕の願いとしては、目立たなくてもいいから、人のために役に立っている人間になっていて欲しい、と思います」
【注1】第1話で傷ついた光太郎を「ウルトラの国」に5兄弟(ゾフィー、マン、セブン、ジャック、A)が連れて行くのを手始めに、第25話「燃えろ! ウルトラ6兄弟」や第33話「ウルトラの国 大爆発5秒前!」、第34話「ウルトラ6兄弟最後の日」にそろって登場した。ハヤタ、ダン、郷、北斗という人間体で登場するのは33、34話で、この時、ゾフィーは地球人の大谷博士(竜崎勝=フリーアナ・高島彩の父)の体を借りている。
【注2】1933年、東京生まれ。「帰ってきたー」「―A」、そして「―タロウ」「レオ」と「第2期ウルトラマンシリーズ」で計14本の監督を務めた。
【注3】「―メビウス」では、宇宙警備隊の筆頭教官として、メビウスをはじめ、後進の指導に当たっている―とされた。最強の敵・エンペラ星人の先兵として送り込まれた巨大ロボット・インペライザーに苦戦するメビウスを助けるため、タロウは再び地球にやって来る。
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