出演するか随分悩んでいた…ウルトラマンタロウ・篠田三郎インタビュー〈1〉

スポーツ報知
ウルトラマンタロウと篠田三郎(C)円谷プロダクション

 今年、放送50周年を迎える「ウルトラマンタロウ」。ウルトラの父、母の実の子供、という設定で「ウルトラ兄弟」「ウルトラファミリー」という概念を打ち出し、ネーミングを含め、親しみやすい印象で当時の子供たちから支持されました。スポーツ報知では40周年時の2013年、主演・東光太郎を演じた篠田三郎(74)を取材。撮影当時の思い出や作品への思いを聞きました。今回、このインタビューをWEBのみ5回に分けて再掲載します。篠田とタロウの久々のツーショットも必見です。

(毎日正午更新。文中敬称略)

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 1965年、大映の18期ニューフェースに合格し、映画「雁」でデビューした篠田。関根恵子(現・高橋惠子)とのコンビで何本もの映画に出演した後、テレビに活動の場を移した。

 「―タロウ」に主演・東光太郎として出演するきっかけは、番組のプロデューサー・TBSの橋本洋二【注1】の存在が大きかった。

 「大映時代、映画のキャンペーンでテレビに出た時、橋本さんの奥様が僕を見ていらして『今度、彼を起用したら』と橋本さんに推薦してくれたらしいんです。それから、ずっと橋本作品に出ていたんです。『ガッツジュン』や『シルバー仮面』ですね。それから『熱血猿飛佐助』【注2】というのもありました。それで、『今度やる作品に主演して欲しい』と言われたのが『―タロウ』だったんです」

 子供たちに大人気の「ウルトラマンシリーズ」の主役。しかし、話を受けるかどうか、葛藤があったという。

 「最近、家族と話していて分かったんですが、出演するかどうか随分、悩んでいたようなんです。『―タロウ』の前、『木下恵介・人間の歌シリーズ』【注3】という大人を対象とするドラマに主演していたので、『特撮作品って、どうなんだろう』と…。でも、橋本さんに育ててもらったわけですから、最後はお受けしました。東光太郎役を頂いて、本当にうれしかったんですよ」

 撮影は1年の長丁場。ドラマ部分や航空機のコックピット場面などの本編に加え、特撮シーンにも出なければならず、ハードなスケジュールを要求されるが、篠田は他のドラマ出演も抱えていた。

 「同時に何本かのドラマを並行してやっていました。木下プロのドラマが終わった後、NHKの『天下堂々』【注4】というドラマが入ったし、忙しかった。当時はドラマが週に何本も作られていた時代ですから、当たり前のことでしたが」

 「―タロウ」出演が決まった頃、前作「ウルトラマンA(エース)」の第20話「青春の星 ふたりの星」にゲスト出演した。主人公のTAC隊員・北斗星司(高峰圭二)と反目しながらも、最後は交流を深めるヨット青年役で、役名は「篠田一郎」。この時、隊員服姿の北斗が首に白いスカーフを巻いているのを見て、篠田が「―タロウ」出演時にまねをした…という話は有名だ。

 「高峰さんに許可をもらった、とか言われているそうですが、実は許可は取っていないんですよ(笑い)。この客演は、恐らく橋本さんが『ウルトラの現場を見て、雰囲気に慣れておいた方がいい』と配慮してくれたから。実は『刑事くん』【注5】というドラマでも、タイトルバックのシーンで桜木健一さんを助ける運転手の役でずっと出ていた。僕を世に浸透させよう、と橋本さんが考えてくれたからじゃないでしょうか」

 【注1】TBSで「第2期ウルトラマンシリーズ」を担当。脚本にテーマ性を与えることでドラマにより深みを持たせた、と言われる。「怪奇大作戦」「コメットさん」「柔道一直線」「刑事くん」など多くのTBS系午後7時台のテレビ映画を世に送り出した。

 【注2】「ガッツジュン」は71年4月11日~11月21日、TBS系で毎日曜日の午後7時から放送された、高校野球を舞台にした青春ドラマ。主人公が元野球選手で行方不明の父親を探すために野球で全国大会出場を目指す―という内容。「シルバー仮面」は「ガッツ―」の後を受けて71年11月28日~72年5月21日まで同時間帯で放送された特撮番組。シルバー仮面に変身する春日光二を柴俊夫が演じた。「熱血猿飛佐助」は72年10月9日~73年4月9日まで、TBS系毎月曜日の「ブラザー劇場」(午後7時半)内で放送された時代劇。佐助を桜木健一、霧隠才蔵を篠田が演じた。

 【注3】70年4月16日~77年3月31日まで、TBS系毎木曜日の午後10時から放送された木下恵介プロ制作の1時間ドラマ枠。人間性を深く追求した作品を手がけた。

 【注4】NHKで73年10月5日~74年9月27日まで毎金曜日午後8時から放送された時代劇。脚本を早坂暁が担当。篠田は主人公・佐倉英介(架空の人物)を演じた。

 【注5】71年~76年までTBS系「ブラザー劇場」枠で放送された連続ドラマ。桜木健一が熱血漢の新米刑事を演じた。その後、放送の後半では主演が星正人に。「―タロウ」では防衛チーム「ZAT」の朝日奈隊長を演じた名古屋章が上司役(時村署長)で出演した。

 ◆篠田 三郎(しのだ・さぶろう)1948年12月5日、東京都生まれ。74歳。65年に大映ニューフェースとして俳優の道に。「―タロウ」出演後も数多くのドラマ、映画、舞台に出演。テレビではNHK大河ドラマ「花神」(77年)で吉田寅次郎(後の松陰)を、同じく「草燃える」(79年)では源実朝、「武田信玄」(88年)では信玄の重臣・山県昌景を好演。映画では「ひめゆりの塔」(82年)、「大日本帝国」(同)、舞台「細雪」などで存在感のある演技を披露している。

 ◆ウルトラマンタロウ 1973年4月6日~74年4月5日、毎金曜日の午後7時からTBS系で放送された「ウルトラマンシリーズ」第5作。円谷プロ創立10周年記念番組と銘打たれていた。今作で「ウルトラの母」が初登場(父は前作の「―A」で登場)し、それまでの「ウルトラ兄弟」に加え、「ウルトラファミリーという位置づけが確立された。ボクサーを目指していた青年・東光太郎は怪獣・アストロモンスとの戦いで瀕死の重傷を負う。そこにウルトラ兄弟が現れ、光太郎の身体をウルトラの国に運んだ。ウルトラの母からウルトラの命を授けられた光太郎はタロウとなり、怪獣や宇宙人と地球を守るため戦う。全53話。平均視聴率18・0%。

 〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では、有料プランに登録すると「ウルトラマンタロウ」のほか、ウルトラマンシリーズ(一部をのぞく)がいつでも見放題となっている。ファン必読の読み物や、ここでしか見られない配信限定作品など、オリジナルコンテンツも満載。

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