プロ野球は2月1日、西武を除く11球団がキャンプインする。球春到来を目前に控え、巨人・菅野智之投手(33)が30日、連載手記「繋ぐ(つなぐ)」で今季にかける思いを記した。19年4月にスタートし、23年第1回となる今回は、このオフの手応えを回顧。昨年12月には3年ぶりに米ハワイ、1月は沖縄・宮古島で納得の自主トレを行い、「新しい菅野智之をお見せできる」と自信。今季の目標を18年以来自身2度目となる200イニングに設定し、悲願の日本一へ向けてフル回転する覚悟を示した。
* * * *
オフシーズンは「野性的に」ということをテーマに掲げ、自分が思い描いていた自主トレ期間を過ごすことができました。原点に返って3年ぶりにハワイからスタートし、体の状態はすごくいいですし、良い形でキャンプに入れます。
野性的という言葉のとらえ方はいろいろあると思いますが、僕の中では本能的にというのもあります。ハワイに行けなかったこの2年間はトレーニング量も減り、今振り返ると、どこかでケガを恐れながらやっていた部分もありました。今年はそういうことを考えず、本能的にやるべきことをやろうと。ここ数年に比べて練習量を増やして強度も上げました。その中で体が元気なのはすごくプラス材料ですし、間違いなくいい結果が出る手応えがあります。
宮崎キャンプではブルペンに入ってもガツガツ投げることはしないです。自主トレでしっかり投げてきたので、感覚を維持するくらいでいいかなと。2次キャンプ地の沖縄に行けば、さらに暖かくなって投げる方は自然と上がると思います。宮崎では投げることに重きを置かず、オフにやってきたことを継続し、さらにトレーニングの強度を上げていくつもりです。
例年だと逆算して早めに実戦登板の予定を決めていました。今年はいつ投げるとか、あまり先の予定を立てず、その日の体と対話しながらやっていきます。天気が良ければブルペンに入るし、今日は入るつもりだったけど寒いからやめようとか。トレーニングもしっかりやってきて体の状態がいいので、焦る必要はないと考えています。
去年は期待に応えられず本当に悔しいシーズンでした。オープン戦も本当に情けない結果(注1)で、開幕投手に決まった後も「大丈夫かな」という雰囲気だったと思いますし、自分自身も不安でした。今年はあぐらをかいていられる立場でもないですし、キャンプからアピールして「やっぱり開幕投手は菅野」と思ってもらえる結果を残してつかみ取る。久しぶりにそういう気持ちになっています。
今年の個人的な一番の目標は200イニングです。今まで200イニングの経験は1回しか(注2)ないですが、投げきった達成感はとてつもないものがありました。先発リリーフの分業制が確立されている中で価値ある数字ですし、長いイニングを投げることが求められている役割だと思うので、チームのために腕を振っていきます。
最大の目標は人生で一度も経験したことのない日本一をつかみ取ることです。個人的にはここ2年間、納得いく成績を残せず、ファンの方も歯がゆい思いをしていると思います。そういう悔しさも胸に、この1か月半、自分を追い込んでやってきました。新しい菅野智之をお見せできると思うので、楽しみに待っていてください。(菅野 智之)
【注1】昨季はオープン戦3登板で防御率7・36。実戦初登板は過去最も遅い3月5日の日本ハム戦(札幌D)だった。
【注2】18年は28登板で自己最多202イニングを投げ、15勝8敗、防御率2・14、200奪三振、10完投8完封。選考基準項目を全てクリアして2年連続沢村賞。最多勝、最優秀防御率、最多奪三振も獲得。
◆巨人の開幕投手事情 18~22年まで5年連続で菅野が務めてきたが、原監督は元日付のスポーツ報知のインタビューで「簡単に言うと、開幕は戸郷だと思う」と昨季チーム最多12勝の若武者を開幕投手の最有力候補に挙げた。一方で戸郷は3月のWBCに臨む侍ジャパンに選出されており、勝ち進んだ場合を含め、調整の難しさがある。17年のWBCでは、代表に選出された菅野の代役としてマイコラスが大役を務めており、阿波野投手チーフコーチは時間をかけて見極める方針を示している。