侍ジャパンの栗山英樹監督(61)が28日、自宅のある北海道栗山町で、3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ向けた「優勝祈願式、出陣式」に参加。2月上旬は恒例の12球団のキャンプ地訪問を行わず、相手国などの分析に時間を費やすことを明かした。「中国とか、チェコとかまだ分かんないだろう。必要なことだけをしっかり準備をすることが誠意」と、まずは、1次ラウンドの対戦国を丸裸にしていく。
愛する地元町民の期待を一身に背負った。外は氷点下まで冷え込む中、栗山監督の心は熱くなっていった。約150人から「全力応援、頑張ろう!」とエールを受けた指揮官は「優勝歓迎会の準備をして待っていただきたい。もし負けたらもう帰ってこないので…。これが栗山町、最後にならないように頑張ってきます」と冗談交じりに意気込んだ。
開幕まで1か月余り。限られた時間で最善の準備を整える。過去のWBC監督らが行ってきた12球団のキャンプ地巡りを行わないことを決めた。「あいさつだけに12球団を回ったりは一切しない。ただ『監督よろしくお願いします』みたいなことはしません。しっかりと準備をするのが誠意だと、必要なことだけをしっかりしていきます」と説明した。
選び抜いた代表30人のメンバーに自ら電話をかけるなど、直接会話することで魂を共有してきた指揮官。すでに12球団の監督にも連絡済みで、今月には阪神・岡田監督との会談のため甲子園を訪れるなど礼は尽くしている。「やることがいっぱいある。データの処理、スコアラーとの話もある」と侍の構想を練ると同時に、対戦相手の分析などに時間を割く意向だ。
特に気になるのは1次ラウンドの2チーム。「中国とか、チェコとか、まだ、分かんないだろう。どのレベルの投手をどう打っているのかも分からない」。中国は世界ランク30位で、過去4回のWBCは全て1次ラウンド敗退。チェコは同15位で今回が初出場。格でいえば同1位の日本を下回るとされる相手にも慢心はない。2月下旬にも来日する2か国の練習試合にもスタッフを派遣し、丸裸にしていくとした。
地元町民が用意したポスターには「歴史は勝者にしか残らない!」と記されていた。第2回大会で連覇した巨人・原監督から「人生で一度だけ胃薬を飲んだのはWBCの初戦前。それくらいプレッシャーがかかるから気をつけろ」とゲキを飛ばされたことを明かした指揮官。「日本の緻密(ちみつ)さ、野球の内容は本当に世界一。それを理解してもらうためには勝たないといけない」と自らに重圧をかけ、白銀の世界から頂点へ挑んでいく。(岸 慎也)
◆栗山監督と栗山町 名字が同じ縁で99年に観光大使に就任。その後も交流を深め地元の有志の協力を得て総天然芝球場などのある「栗の樹ファーム」を設立。12年の日本ハム監督就任後も同町を拠点にし、優勝した際には“1人パレード”を開催するなど町民との縁も深い。現在は自宅も構えている。22年12月31日時点の人口は1万1106人。