第95回記念センバツ高校野球大会(3月18日開幕・甲子園)の選考委員会が27日、大阪市内で行われ、昨秋の関東大会で4強入りした慶応(神奈川)が5年ぶり10度目の出場を決めた。PL学園時代に甲子園史上最多の13発を放ち、西武、巨人、オリックスでも活躍した清原和博氏(55)の次男・勝児内野手(1年)も伝説の聖地を踏みしめることになった。勝児は父がなしえなかったセンバツ制覇を目標に掲げ、日本一への貢献を誓った。組み合わせ抽選は3月10日に行われる。
春が来た。センバツ行きのチケットが日吉キャンパスに届くと、慶応ナインは満面の笑みを浮かべた。輪の中心には清原勝児がいた。部員70人の大所帯だが、遠目に見ても、どこにいるかが分かる。天性のオーラとしか言いようがない明るさを放ちつつ、父が伝説を刻んだ聖地への思いを語った。
「素直にうれしいという気持ちが一番です。自分は夢の舞台が甲子園だったので、そこでプレーできるというのをうれしく思いつつ、あらためてスタートするという気持ちです」
たどり着きたい地は一つしかない。「KEIO日本一という目標を掲げている。このチームで優勝することを目標にやっていきたい」。PL学園時代、5季全てで甲子園出場を果たした和博さんだが、センバツは2年時、決勝で岩倉(東京)の山口重幸に1安打完封された。3年時には準決勝で伊野商(高知)の渡辺智男に3三振を喫し、4強に終わった。年明けには父について「将来は抜かしたい」と壮大な夢を描いていた勝児。父も未到の春の頂点へ、まずは全力で駆け上がるのみだ。
そのためにもグラウンド内外で全力を振り絞る。まずは打撃だ。昨秋の関東大会は7番、6番で4強入りに貢献したが、主砲への野望を口にした。「4番を打ちたいというのはあります。チームに貢献するという意味で、一番貢献できるのが4番」と力を込めた。そして「声」だ。根っからの“陽キャラ”は「チームを盛り上げるというのが、自分の大きな武器。甲子園ではしっかりとチームを勇気づけられるよう、プレーしたい」。帽子のつばには和博さんに書いてもらった「氣」のインクがにじむ。劣勢でも明るく立ち向かうのが信条だ。私立小の最難関・慶応幼稚舎の出身だが、プレースタイルは泥臭い。
成績がわずかに届かなかった影響で2度目の1年生。規定上、最後の高校野球シーズンとなる。その魅力を「1回負けたら終わりのトーナメント。そこで勝つ喜びは大きい」と語る。報道陣からは甲子園最多の13発を放った父との“父子アーチ”を望む声も出たが「そこにこだわりはない。自分は自分なので」と言い切った。
父は言った。「どんな試合よりも一番覚えているのが甲子園」。ついに憧れのグラウンドに立つ。勝負に思いをはせ「初球から振っていきたい。1打席1打席が勝負。全力でいきたい」と初球フルスイングを自らに課した。幾多の先人の涙と汗が染みこんだ黒土の聖地。その春空に「清原」のアナウンスが響く瞬間が、もうすぐ訪れる。(加藤 弘士)