嵐の松本潤が江戸幕府の初代将軍・徳川家康を演じるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜・後8時)の第4回「清須でどうする!」(29日放送)で、家康(現時点では元康)と織田信長(岡田准一)が対面する。
主とあおぐ今川義元(野村萬斎)が敗れた後、自分を助ける気のない息子・氏真(溝端淳平)を頼ったままでいいのか。いっそ信長についた方がいいのか。究極の選択の末、信長を選んだ家康。信長に直接会って同盟を申し入れようとする。
今作では、両者が幼少期に接点があったとされており、それ以来の対面。かつては子役の家康(川口和空)が岡田准一に取っ組み合いでもてあそばれていたが、次は松本の番だ。番組公式ツイッターの予告動画では、岡田のラリアットで松本がぶっ飛ばされる。別の番組でも語っているものの、関係者によると2人の対決はスタントもなしで撮影している。歴史を学ぶ上では単純に「三英傑」ではある。それでも信長は家康より9歳年上。実際の力関係も近いものがあったかもしれない。格闘技で鍛えている岡田の腕が明らかに太いのが怖い。
前週の第3回「三河平定戦」(22日放送)では懐かしい対面があった。幼い頃に生き別れた母・於大の方(松嶋菜々子)と再会。「母上…」涙目になって喜んでハグする感動の場面だ。だがその後、優しい顔の母からとんでもないワードが。「今川と手を切りなさい」―。思わず真顔になる松本。妻(有村架純)と子供は今も今川の領地に在住。無理もない反応だ。
そんな家康に母は続ける。かつて家康は幼少期、織田家の人質になったことがあり、父・松平広忠(飯田基祐)は助けようとしなかった。その時を持ち出し「そなたの父上は、かつて尾張におったそなたを見捨てました。恨んでおいでか?」と尋ね、家康も言い返せなくなってしまう。
さらに家臣の酒井忠次(大森南朋)も家康を城外に連れ出し、収穫に喜ぶ農民の姿を見せる。「今年は今川様に搾り取られずに済むと思っておるからです」と農民の心情を説明した。石川数正(松重豊)とともに土下座で今川からの独立を懇願。家康に反論の余地はなくなった。
本や教科書で歴史を学んだだけだと、コロコロと主君を変えて調子のいい大名にもみえる家康。周囲の人物の言動や心境を丁寧に描くと、説得力が違ってくる。見ていて誰も嫌いになれない。古沢良太氏による脚本の力だと思わされる。同回では、今川領にいる松平家の女性陣が処刑されたり、首おけが登場したりするなど悲しいシーンも。大河だから仕方ないとはいえ、人間の業の深さを感じさせられる。
母からは言葉の暴力、信長からはリアルな暴力で振り回される家康。周囲がよってたかって困らせる構図になっている。トップアイドルながらも、困り顔や泣き顔ばかりの松潤。SNSでは「松潤がかわいくてかわいそう」「かわいそうな松本潤って本当に魅力的よな」と視聴者も母性本能に近い心をくすぐられている。
第3回の平均世帯視聴率は14・8%。前回よりやや下がったものの、同時間帯ではトップ。本紙調べの週間視聴率では、朝ドラと相撲中継2つに次ぐ4位に。数字よりも国民的ニュース番組「ニュース7」より高いことに驚かされる。
(NHK担当・浦本将樹)
※視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区