日本相撲協会は25日、東京・両国国技館で大相撲春場所(3月12日初日・エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議を開き、幕下15枚目格付け出しの初場所で7戦全勝優勝した落合(19)=宮城野=の新十両昇進を決めた。初土俵から所要1場所での昇進は史上初となった。2度の高校横綱、実業団横綱にも輝いた“令和の怪物”が、新たな歴史を刻んだ。落合はこの日、師匠の宮城野親方(元横綱・白鵬)とともに都内の部屋からオンラインで会見し、横綱昇進の夢などを語った。
見慣れない新十両会見が、怪物・落合のすごさを物語っていた。昨年12月に入門したばかり。スピード出世を象徴するまげも結えない短髪の19歳と、28日に断髪式を控えたまげ姿の宮城野親方が並ぶという、珍しい師弟の2ショット。初となる所要1場所での関取昇進を果たした逸材は「すごくうれしい気持ちと感謝と、これから頑張らないといけない。身の引き締まる思いです」と実感を込めた。
デビューから大物感が漂っていた。初場所の一番相撲は異例の不戦勝だったが動じず。「土俵の雰囲気を、戦う前に体験できてよかった」と前向きに捉えて以降も白星を重ねた。13日目に風賢央(かぜけんおう)=押尾川=を破り、現行制度となった2001年1月以降では、史上2例目の幕下15枚目格付け出しで7戦全勝V。鳥取城北高では2度の高校横綱、昨年は実業団横綱に輝いたが「経験したことのない精神、肉体的に疲れが出て、プロで活躍されている方々がどれだけすごいのか」と、角界の厳しさも同時に痛感したという。
幕下付け出しから、負け知らずで関取までたどり着くのは輪島(元横綱)、武双山、雅山(ともに元大関)に次いで4人目。いずれも看板力士となった。落合は新十両の春場所でも全勝Vなら、史上初の所要2場所での新入幕の可能性も膨らむ。
会見では宮城野親方の横で緊張したのか、「稽古に精進してまずは強くなるのが目標」と控えめな言葉を選んだ。だが、史上最多45度の優勝を誇る師匠が即、物言い。「もう一回やらせましょう」と“取り直し”を指示した。
仕切り直しの決意表明。落合は「将来の夢は宮城野部屋で強くなって、幕内で最高優勝をして師匠を泣かせたい。横綱になる夢を持ってずっと相撲を続けてきたので、いつかその夢をかなえたいです」と上方修正した。これには最強横綱も「100点満点」とニンマリ。角界で数々の金字塔を打ち立てた師匠とともに、“令和の怪物”が番付を駆け上がる。(竹内 夏紀)
◆落合に聞く
―師匠の断髪式前に新十両昇進を決めた。
「師匠はきれいなまげを結って、大横綱というイメージがある。師匠のまげ姿が見られなくなるのは寂しい気持ちですけど、まげがあるうちに記者会見ができていることは何より幸せな気持ちです」
―どういう力士に。
「師匠のように、スピードもあって力もあって、柔軟性もある力士を目指しています」
―しこ名への思いは。
「自分の名前の落合という名前には誇りを持っているんですけど、大相撲の世界で戦っていく上でしこ名を頂きたい思いは強いです」
◆過去に幕下付け出しから全勝で十両昇進した力士
▼輪島(元横綱) 日大で学生横綱などの実績を残す。初土俵から3年半で学生出身初の横綱に。「黄金の左」と呼ばれた左差しで史上7位の優勝14回を誇る。
▼武双山(元大関) 専大時代にアマ横綱。初土俵からわずか4場所で新入幕。「平成の怪物」の異名を取った。優勝1回。
▼雅山(元大関) 明大を経て入門し、所要4場所で新入幕。昭和以降最速の初土俵から所要12場所で大関に昇進。「20世紀最後の怪物」の異名も取った。