栗山英樹監督、WBCへ「気合入った」 森保一監督、代表始動へ「気を引き締め心機一転」…対談・後編

スポーツ報知
対談を終え、サイン入りのユニホームを手にする栗山監督(左)と森保監督

 3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の侍ジャパン・栗山英樹監督(61)と昨年開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会で日本をベスト16へ導いた森保一監督(54)の対談が実現した。世界を相手に日本を率いる両監督が、選手選考や起用法など、代表監督としての苦悩をぶつけ合った。(取材・構成=岸 慎也、星野 浩司)

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 森保監督(以下、森)「海外で活躍するスター選手が多い中、コミュニケーションの取り方や個性を生かすポイントは?」

 栗山監督(以下、栗)「WBCは本当に一発勝負。11月に練習試合をやっただけで本番。コミュニケーションをほとんど取れていない状況で、個々の能力を生かすしかない。僕の魂、一緒に戦いたいんだとぶつけた。ダルビッシュ選手、大谷選手、鈴木誠也選手、難しいスケジュールだけど、『日本の野球のためにいきます』と。監督だから上ではなく、同じ野球人として何ができるかのぶつかり合いでしかなかったけど、彼らが理解してくれた」

 森「大谷選手を日本で二刀流で起用された。大胆な発想につながったことは?」

 栗「もともと常識とか、過去こうだったとか、あまり好きなタイプではない。翔平の場合、投げる、打つで本当に2人いて、4番とエースになれるとみていた。誰もどっちかを殺すわけにもいかないという感覚。二刀流は無理かなと思うケースは一回もなかった」

 森「過去にとらわれず、選手の良さを消さないようにというのは勉強になる。村上選手は先日(紅白歌合戦の)仕事でご一緒して、若いけどめちゃくちゃ落ち着いていました」

 栗「11月に初めて同じベンチに入り、22歳とは思えなかった。一緒にやった中で近藤(ソフトバンク)という選手は、分析から技術など、最高に考えられる選手で、試合中、後ろで村上選手がずっと話している。『あの投手ならこうだよね』と。豪州の投手が急に出てきて、狙い球や捨てる球、考え方がものすごく理にかなっている。あまりに能力が高く、あれだけホームランを打って打率も残る」

 栗「代表に入るか線上の選手がいて、決断の際に情がわく部分は?」

 森「めちゃくちゃあります。一番大切にしているのはチームファースト。それが選手ファースト、日本ファーストになる。W杯では26人招集した中で4人を使っていない。序列はいつでも変わるけど、チームづくりのベースを持った上で、プレーしてもらう選手、サポートにまわる選手、次につながると招集した選手もいる」

 栗「例えば、柴崎選手が(昨年のW杯で)出場がなかった。野球でも起こると思う。選んだのに出場がなかった時、言葉のかけ方などは?」

 森「普段、自然とコミュニケーションを取る。試合には今回使えなかったけど、話せる範囲で、なぜ使わないか、優先順位が違う選手になるかをストレートに話している。彼は試合に出なかったとしても、チームのために戦ってくれると感じさせてくれた。チームのために必要だと思った」

 栗「活躍させてあげたいけど、監督は勝つことが正義。自分も苦しむと思う」

 森「栗山監督は言葉の引き出しも多く、すごく賢い方。私とタイプは違う。私自身、つくった自分を選手に見せても伝わらないと思っている。素直に感じていることをぶつけていった方がいいと思う」

 栗「選手を決める時、困ったら相談する人はいますか?」

 森「私が18歳の時から一緒にやってた横内(昭展)コーチとは話をしてきた。一番真逆なことを言ってくれる。『それ、本当に大丈夫ですか?』と。一拍考えることをよく言われてきた。W杯ではコーチ、分析担当も含めて10人ほどいて、みんな勇気を持って意見を言ってくれた」

 栗「その一拍は大事ですね。自分は正しいと思って突っ走るけど、その人に言われて、頭の中が整理されます。意外と、みんなが思っている以上のものが生まれるときって、みんなが反対したもの。みんなが良いと言ったものは当たり前のものしか出てこない。全員が反対したときには、これ面白いと思っちゃうタイプです」

 森「すごいですね。ものすごい勝負師という、普通の思考回路じゃない顔付きを見させていただきました。栗山監督は情熱、熱すぎます。1%でも2%でも勝つ確率を上げるために、何でもやるという気持ちが伝わってきた。新しい景色、最高の景色にたどりつくため、本当に気を引き締めて、心機一転、積み上げていかなければいけないと、あらためて感じさせていただきました」

 栗「気合入りました。プレッシャーになりましたけども、特にハッピージョブだと言ってくださるのはいいことですね。みんな『監督は大変だ』しか、言わないけど、すごく楽しさもありますもんね。監督がつくってくれた流れを生かして、3月に持ち込んで引き継いでいけるようにしたい。日の丸に対してどれだけみんながやり尽くせるか。最後は能力とか技術があるけど、その魂の部分で100%ぶつけれるように、しっかりやっていきます」

 ◆栗山 英樹(くりやま・ひでき)1961年4月26日、東京・小平市生まれ。61歳。創価高から東京学芸大を経て、83年ドラフト外でヤクルト入団。右投両打の外野手として89年にゴールデン・グラブ賞。めまいや吐き気を伴うメニエール病の影響もあり、90年に29歳で引退。通算494試合で打率2割7分9厘、7本塁打、67打点。野球評論家、白鴎大経営学部教授を経て、2012年から日本ハム監督。16年には正力松太郎賞を受賞。21年オフに退任し、侍ジャパン監督に就任。

 ◆森保 一(もりやす・はじめ)1968年8月23日、静岡・掛川市生まれ、長崎市育ち。54歳。長崎日大高から87年にマツダ(現広島)入団。92年に日本代表初選出。国際Aマッチ35試合1得点。京都、広島、仙台を経て2003年に引退。04年から広島、U―20日本代表、新潟でコーチを歴任。12年から広島を指揮し、3度のJ1優勝。17年10月から東京五輪代表監督、18年7月にA代表監督と兼任。21年東京五輪4位。22年カタールW杯16強。同12月、26年W杯まで続投が決定。家族は妻と3男。

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