◆全国都道府県対抗男子駅伝(22日、広島市平和記念公園前発着)
立大監督の上野裕一郎(37)がアンカーを務めた長野が2時間17分10秒の大会新記録で2大会連続の最多9度目となる優勝を飾った。高校生が務めた3区間でいずれも区間新記録をマーク。4区で首位に立つと、最終7区(13キロ)で「日本一速い監督」と呼ばれる上野が激走し、歓喜のゴールテープを切るという前代未聞の活躍を演じた。25秒差の2位は埼玉。3位に東京が続いた。
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上野監督といえば、中大やエスビー食品の選手時代、首をせわしなく動かして周囲を見回しながら走ることが多く、失礼ながら「落ち着きのないランナー」という印象を持っていた。そのため、当初、指導者としての資質に私は懐疑的だった。だが、私の目が節穴だった。すぐに考えを改めた。
就任直後、上野監督の講演会を取材した際のこと。最後の質疑応答で、年配の一般男性が質問をうまくまとめられず3分を超える時間を要した。上野監督は首を全く動かさずに、その男性を見つめていた。ようやく男性が話し終えた後、上野監督は「ご質問、ありがとうございます」と頭を下げ、丁寧に回答した。その誠実な姿勢と落ち着いた態度に私は感心した。
「僕が就任した時、立大関係者の皆さんは、とてつもなく不安だったと思います」と自虐的な冗談を言える懐の大きさも魅力だ。他の監督には絶対にない走力という武器に加え、胆力もある。近い将来、上野監督は立大を箱根駅伝で優勝争いできるチームに育て上げると思う。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)