1971年からの第2次怪獣ブームの中、「男女の合体変身」という新機軸をウルトラマンシリーズの中で打ち立てたのが「ウルトラマンA(エース)」(1972年4月~73年3月)です。2022年に放送50年を迎えた同作ですが、スポーツ報知では「―A」とともに地球を守った地球防衛チーム「TAC」のメンバーを12年の40周年時に集め、“夢の同窓会”と銘打って座談会を開催しました。「A」に変身した北斗星司(高峰圭二=76)、南夕子(星光子=74)両隊員に射撃の名手・山中一郎(沖田駿一=76)、宇宙生物の専門家・吉村公三(佐野光洋=72)、「南無阿弥陀仏…」が口癖だった今野勉(山本正明=14年没)、美人ながら爆弾専門家の美川のり子(西恵子=74 )の各隊員が、思い出話に花を咲かせました。今回、WEBのみ再掲載しました。(毎日正午更新)
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―星さんは、やはり28話「さようなら 夕子よ、月の妹よ」のことが一番でしょうか。南夕子が月星人であり、この回を最後に月に帰ってしまう…
星「当時、台本を2話分ずつもらっていたんですが、第28話を読んで『そうか…私は月の人で、月に帰るのか…でも、どうやって地球に帰ってくるんだろう。TACの仲間が迎えに来るのかな…』とか、いろいろ考えました。だって、それまで監督やプロデュサーから『これで降板だよ』って、一度も言われていなかったんですから。でも、29話の台本のどこにも夕子が出てこない。私の名前もない…それで『ああ…私、降ろされちゃったんだな』って分かりました」
佐野「僕も台本読むまで知らなかった。みんなそうだと思いますよ。でも、星さんは当時、降板についての説明を受けていると思っていたんです。とにかく内容についてショックを受けたのは覚えています」
星「だから、28話は全身全霊でやらせていただきました」
―それから随分長い間、星さんは「A」のことを封印されていましたよね。
星「(降板までのいきさつに)ものすごく傷つきましたから…思い出したくなかったですもの…それくらい傷ついていました」
―ウルトラマンシリーズ40周年記念作品の「ウルトラマンメビウス」(06~07年)の劇中、北斗と南が本当に久しぶりに再会しました。ファンはあのシーンのことを忘れないと思います。【注1】
星「時間はかかりましたが、今、こうやってこの席にいることを本当にありがたいな、と思っています。誰も体験できないようなことをさせていただいたんですから」
―最後に、皆さんにとっての「A」とは、どんな存在なのでしょうか。
佐野「僕にとっては生きる糧、の一つですね」
西「宝物です。撮影は1年間の長丁場でしたけど、最高の思い出です」
山本「『忍者部隊月光』とか『柔道一直線』とか、視聴率の高いドラマに出させていただいたんですが、『A』もそうです。役者として幸せ者です」
沖田「映画から役者をスタートしたから、『何だ子供番組じゃないか』って思ったこともありました。でも、40年経っても当時の子供たちが『A』を愛してくれている。本当にやって良かった作品だと思います」
星「皆さんから大きなご褒美をいただいたと思っているんです。やっぱり凄く頑張ったし、そのことのご褒美をいただいた…大きな宝物をいただいたと思っています。映像に出たのは初めてだったし、本当に一生懸命だった。私の代表作って『A』くらいなんです。その作品がこうやって支持されているんですから、本当にうれしいです」
高峰「正直、俳優として『A』に出たことを忘れたい時期もありました。常に『北斗星司』のイメージが付いて回る…『俺は今は違うんだ』と思うこともありました。でも、こうやってウルトラマンシリーズに帰ってきて、こんなにも多くのファンが待っていてくれて、本当にビックリした。ありがたいことです。今は本当に北斗を演じて良かった、と心から思います」=おわり=
(12年4月30日、東京・北の丸の科学技術館で収録)
【注1】第44話「エースの願い」で高峰、星が客演した。メビウスを倒そうと出現したヤプール、超獣ルナチクスをA、メビウスが互いを励まし倒した。Aが最終回で地球の少年たちに残した「エースの言葉」を「(今も)変わらぬ願い」としてメビウスに伝えた北斗は、夕子との再会も果たす。その後、08年公開の映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」では、パラレルワールド(異世界)が舞台という設定だったが、北斗と南が結婚、娘をもうけていた。
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