1971年からの第2次怪獣ブームの中、「男女の合体変身」という新機軸をウルトラマンシリーズの中で打ち立てたのが「ウルトラマンA(エース)」(1972年4月~73年3月)です。2022年に放送50年を迎えた同作ですが、スポーツ報知では「―A」とともに地球を守った地球防衛チーム「TAC」のメンバーを12年の40周年時に集め、“夢の同窓会”と銘打って座談会を開催しました。「A」に変身した北斗星司(高峰圭二=76)、南夕子(星光子=74)両隊員に射撃の名手・山中一郎(沖田駿一=76)、宇宙生物の専門家・吉村公三(佐野光洋=72)、「南無阿弥陀仏…」が口癖だった今野勉(山本正明=14年没)、美人ながら爆弾専門家の美川のり子(西恵子=72)の各隊員が、思い出話に花を咲かせましたが、今回、WEBのみ再掲載。7日間にわたって秘話をお届けします。(毎日正午更新)
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―話は変わりますが、今野隊員といえば、「南無阿弥陀仏…」が決めゼリフのようになっていましたが、監督さんと話し合って決めたのですか?
山本「いや、台本に書いてあっただけですよ。それに『南無阿弥陀仏…』ってやったのは、2回だけだったと思うな。タックアローに載っている時と、岡山ロケ【注1】の時にやっただけじゃないかな」
高峰「台詞では言っていなくても、拝むシーンはもっとあったんじゃない? 印象すごくあるけどなあ」
―操縦席でピンチになった時なんか、常にやっていた気がします。
山本「今野隊員は『寺の息子』という設定だったからね。ただ、本当に台本通りの台詞なんですよ、あれは」
―練りに練られた台詞か、と思いましたが、聞いてしまうと大したことなかった。
(一同、大爆笑)
高峰「何でここで『一生懸命考えた』って言っておかないんだよ!(笑い)」
―山中隊員はチームのリーダー的存在で、常に北斗を叱っている感じでしたが、実は高峰さんとは大の仲良しだったんですね。
沖田「夕子が月に帰った後、放送の後半なんかはいつも一緒にいたな」
西「すっごくいいコンビだった」
高峰「よくマージャンとかしたよな。後半は。カメラマンとか入れてさ。次の日、朝から撮影所に行くんだけど、台本なんか頭に入ってない」
沖田「地方ロケで東京駅に集合した時のことも忘れられないね。俺は真っ赤なジャケットに白のパンツ。白の靴で行ってさ」
西「こーんなに大きい垂れメガネのサングラスして…」
沖田「西さんはグリーンのジャケットだっけ?」
星「私が黄色いホットパンツ姿…」
西「そんないで立ちで駅に集合したら、近くにいたご婦人に言われたんです。『あなたたち、その格好で一体、何のお仕事をしているの?』って(笑い)。そうしたら、沖ちゃんが『チンドン屋みたいなもんですよ』って。『若いのに大変ね』って言われちゃった」
(またまた大爆笑)
高峰「良かった。俺そこにいなくて」
―竜五郎隊長を演じた嵯川哲朗さん【注2】について伺います。キャリアがありますし、やはり常に現場をまとめていたのでしょうね。
佐野「私は演技についてのアドバイスをもらいました。一度、アップで笑わなければならないシーンがあったんですが、どうしてもできなかった。すると、隊長がコツみたいなものを教えてくれました」
高峰「嵯川さんの女性マネジャーがよく差し入れしてくれてね…夏はアイスクリームを持ってきてくれたりね。『隊長、いい人だな』って、それで思った(笑い)」
山本「嵯川さんが出ていた『大江戸捜査網』【注3】って、『A』よりも前?」
高峰「同時じゃないかな」
星「お忙しい方だったわよね」
西「私たちと飲みに行ったりとか、お茶したり…とかなかったですね。みんなで昼食に行ったのは何度かありましたよね」
【注1】第15話「黒い蟹の呪い」、第16話「怪談・牛神男」の2話で岡山ロケが行われた。吉村隊員の故郷が「岡山・牛窓町」、今野隊員は九州出身だが親戚が岡山にいる、という設定で、この両隊員を中心に物語が進行した。
【注2】瑳川 哲朗(さがわ・てつろう)1937年1月22日、千葉県館山市出身。早大卒業と同時に「劇団青俳」に入団。63年、テレビドラマに脇役でデビュー。65年に東宝演劇部に所属し、多くの舞台に出演した。70年からは「大江戸捜査網」で井坂十蔵を演じ、人気に。その後も舞台、ミュージカル、洋画の吹き替え(ヘンリー・フォンダなど)で活躍。21年2月17日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)のため死去。享年84歳。
【注3】東京12チャンネル(現・テレビ東京)で放送された時代劇。70~84年まで(休止期間を含む)土曜夜に放送された。杉良太郎、里見浩太郎、松方弘樹が各シリーズで主演。オープニング時の「死して屍(しかばね)拾う者なし」の台詞が有名。嵯川は「隠密同心・井坂十蔵」として重厚な演技を見せた。
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