1971年からの第2次怪獣ブームの中、「男女の合体変身」という新機軸をウルトラマンシリーズの中で打ち立てたのが「ウルトラマンA(エース)」(1972年4月~73年3月)です。2022年に放送50年を迎えた同作ですが、スポーツ報知では「―A」とともに地球を守った地球防衛チーム「TAC」のメンバーを12年の40周年時に集め、“夢の同窓会”と銘打って座談会を開催しました。北斗星司(高峰圭二=76)、南夕子(星光子=74)両隊員に射撃の名手・山中一郎(沖田駿一=76)、宇宙生物の専門家・吉村公三(佐野光洋=72)、「南無阿弥陀仏…」が口癖だった今野勉(山本正明=14年没)、美人ながら爆弾専門家の美川のり子(西恵子=74)の各隊員が、思い出話に花を咲かせましたが、今回、WEBのみ再掲載。7日間にわたって秘話をお届けします。(毎日正午更新)
★ ★ ★
―本日はありがとうございます。TACチームのメンバー勢ぞろいで、ファンにとっては貴重な顔合わせです。では、皆さんの近況からお話しください。
高峰「僕は役者をやめて数十年になるんですが、初代のウルトラマンの放送から40年経ったとき(2006年)、『記念の映画を撮る』ということになって引っ張り出されまして、そこからウルトラ関係の映画やテレビにだけは役者として出演しています」
星「私は2年に1度くらいの感じでお芝居をやらせていただいています。ジャズダンスもやっていまして、もう一度、どこかで踊りたいな…なんて思いながら毎日、暮らしています」
沖田「役者は二十数年前に引退して、同時に今の店(飲食業)を二子玉川にオープンしました(注・22年秋に閉店)。その後、星君と一緒に河崎実監督の映画【注1】に出たりしたんですが、それが26年ぶりの映画出演となりました」
山本「ウルトラマンAが終わって、ほどなく役者をやめて、その後は美術が好きだったので、美術の仕事をやっています」
西「女優をやめて35年くらいになります。結婚を機に引退して、主人と二人でコーヒーショップをオープンしました(注・19年暮れに閉店)。『A』のファンの人がインターネットなどで調べて来てくださるんですよ。中には夜行バスで来たり」
佐野「『A』での俳優デビューをピークに徐々に右肩下がりになりまして(笑い)、酒におぼれて29歳で急性すい炎を患って、1年間リタイアしました。でも、その酒を扱い仕事を始めてもう25年。ある時、『もう一度芝居をやりたい』と思って、今、チャレンジしています。お店もやりながら二足のわらじで頑張っています」
―皆さんの「A」への出演のきっかけを教えてください。高峰さんはTBSドラマの「刑事くん」にゲスト出演して、それが橋本洋プロデューサー【注2】の目に留まった…という話ですが。
高峰「僕は最初は関西で俳優をしていたんですが、仲が良かった桜木健ちゃん(健一)や近藤正臣が先に東京に出て、『こっちに来いよ』と言われていたんです。で、健ちゃんが主演していた『刑事くん』に出演したんです。それが(『A』の)テストみたいな感じだった。最近知っただけど、北斗役は佐野君で決まっていたらしい。数年前から円谷の作品にタッチするようになって、当時のオーディションの資料映像を見る機会があったんだけど、佐野君と全く同じような内容のことをやっているんだ。芝居なんか何もやっていない。ただ走ったり、高い所から飛び降りたり…僕は時代劇出演が多かったから『高い所から飛び降りろ』と言われれば、それなりの格好はできる。佐野君よりも僕の方が格好良かったんだな(笑い)」
佐野「もともと歌手をやっていて、恩師から『歌よりも芝居の方に行ったらどうか』と言われてたんです。で、ある日、『オーディションを受けないか』ということになりまして…。で、行ってみたら高峰さんがいた。僕のマネジャーはどういう番組のテストか知らなかったんですよ。だから、当時はやっていたかかとの高いブーツを履いて行っちゃって…アクションなんてできるもんじゃない。高峰さんとは雲泥の差。『ああ、これはダメだな』とすぐに分かりました。でも、なぜ『吉村公三隊員』に振っていただいたのか…今となっては、それがすごい財産になっているんですが」
高峰「北斗と吉村の差はブーツのかかとの高さなんだよな(笑い)。その時、佐野君が普通の運動靴で来ていたら、違った北斗像ができていたかもしれないな」
【注1】2011年11月に公開された特撮映画「地球防衛ガールズP9」。沖田は「ヤブナカ長官」役、星は「謎の女」という役柄で出演。
【注2】「帰ってきたウルトラマン」から始まる“第2次怪獣ブーム”を巻き起こした作品群を担当。脚本にテーマ性を持たせることでドラマにより深みを持たせた、と言われている。「怪奇大作戦」「柔道一直線」「刑事くん」など多くのTBS系午後7時台のテレビ映画を世に送り出した」
◆ウルトラマンA(エース) 1972年4月7日~73年3月30日まで、TBS系で毎週金曜日午後7時から放送された。超獣ベロクロンの襲撃の最中、人々を守るために絶命した北斗星司、南夕子にAが自らの命と力、ウルトラリングを授ける。2人はピンチの時、「ウルトラタッチ」でAに合体変身、地球を守るために戦う。後に月星人である夕子は故郷の月に帰り、北斗が一人でAになる。全52話。平均視聴率18・6%。
◆TAC 「TERRIBLE―MONSTER ATTACKING CREW」の略。超獣ベロクロンによって全滅した地球防衛軍に代わり編成された地球規模の防衛チーム。本部はニューヨークにあり、南太平洋にも国際本部が置かれている。欧州、アフリカ、極東(日本)に支部がある。極東支部の基地は富士山北麓(富士五湖付近)にあり、地形などでカモフラージュされた中に司令室、格納庫、ミサイル基地などが置かれ、また、それぞれの施設はシークレットロードによってつながれている。主力航空機はタックファルコン、タックアロー、タックスペース、他に専用車両のタックパンサー、地底探査用戦車・ダックビルなどの装備がある。隊長は竜五郎。兵器開発担当として梶洋一技師がいる。
〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では、有料プランに登録すると「ウルトラマンA(エース)」のほか、ウルトラマンシリーズ(一部をのぞく)がいつでも見放題となっている。ファン必読の読み物や、ここでしか見られない配信限定作品など、オリジナルコンテンツも満載。