サッカーの女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会開幕まで、20日であと半年となった。9大会連続9度目の出場となる「なでしこジャパン」のFW田中美南(28)=INAC神戸=が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、WEリーグ得点王を手土産に、自身初のW杯メンバー入りとメダル獲得を誓った。1次リーグC組の日本は7月22日、ザンビアとの初戦を迎える。(取材・構成=田中 孝憲)
世界の頂点に立ってから12年。日本にとって9度目のW杯開幕まであと半年となった。“前哨戦”となったスペイン遠征では、本大会で対戦するスペインなどに連敗。欧州勢との力の差を改めて実感した。
「W杯までにこの差埋める、この人たちに勝たなきゃいけない、という現実があった。個人もそうですし、チームでも」
実際に対戦する相手に完封負け。ピッチに立って何を感じたのか。
「やっぱりボールを動かすのが上手で、サイドに展開されたりする中で、守備の時間がどうしても長くて。それで、攻撃に切り替わった時にパワーを発揮できなかった。でも個人のところでは、やれないことはないなって、正直思った。でも結果は事実ですし。点を取りにいかないと勝てないので。チャンスはチームとして何度か作れた。そこはやっぱ決めてる力。相手のミドル一発ぶち込まれて、やっぱりその差は感じました」
悔しさを味わった一方で、遠征とほぼ同時期に行われた男子のカタール大会での躍進で、大きな刺激を受けた。
「難しいと思われていた中で結果を取ってきて、興奮した。やっぱり格好いいなと思って。(日本代表への)注目が上がってるって感じた。結果ってすごく大事って改めて感じました」
メダルへの憧れの原点は、なでしこフィーバーに沸いた、11年ドイツ大会の優勝だ。
「見ていて、シンプルに『金メダルが欲しい』って思ってました。(トロフィーを掲げる澤穂希に)すげぇって興奮しました(笑い)」
東京五輪ではチームの全3得点のうち2ゴールしたが、8強止まりだった。
「悔しいって感想で終わった。個人では得点で結果を残しつつ、チームを勝たせられる。どんなにきつい試合でも1点取って次に進めことができる選手になりたい。やっぱり、メダルが欲しい。金メダルが一番嬉しい」
2月には米国遠征でブラジル、米国、カナダと対戦する。メンバーに選出されれば何を試したいのか。
「やっぱり結果。海外のチームは、決めるところに決めてくる。力がすごい長けてるなって思うし、自分はそれが欲しいもの」
最近はなでしこジャパンでも海外組が多い。それでも田中は国内でのプレーを意識してきた。
「自分は海外(ドイツ・レバークゼン)に一度行った経験がプラスになった。だからこそ、日本でまずコンディションを上げたい。ベストに持って行くのは、海外に行くより日本の方が作りやすいので」
残り半年で迎える本大会。時間がないからこそ、自分に明確な課題を与えている。
「最初のチャンスでちゃんと決める。W杯を考えた時、実行できるようになっておかないとかないと。本番で外国人相手で少ないチャンスを決めるのは難しいし、ものにしていきたい」
そこで狙うのはWEリーグ得点王を取って、自身初のW杯メンバー入りだ。
「アピールにもなるし、試合にも繋がってくる。個人としても選ばれれば初めてですし、W杯はサッカー選手として夢の場所なんで。ここで輝きたいなって思います」
◆田中 美南(たなか・みな)1994年4月28日、タイ生まれ。28歳。兄の影響でサッカーを始め、07年に日テレ東京V下部組織のメニーナ入団。12年にトップチームに昇格した。なでしこリーグでは、15年から5連覇に貢献し、16年から4年連続得点王。20年にINAC神戸へ移籍、21年2月にドイツ1部レバークーゼンへ期限付き移籍し、五輪前に復帰。13年にアルガルベ杯・ドイツ戦でA代表デビューし、初得点。国際Aマッチ63試合27得点。164センチ、56キロ。
◆女子W杯の日本の成績 第1回(91年)中国大会では1次リーグ敗退。95年スウェーデン大会では8強に進出した。99、03年の米国大会、07年中国大会ではいずれも1次リーグ敗退に終わったが、佐々木則夫氏が指揮した11年ドイツ大会で初優勝。MF澤穂希が大会最優秀選手賞と得点王に輝いた。15年カナダ大会は決勝で米国に2―5で敗れ、惜しくも準優勝。19年大会では高倉麻子監督が率い、決勝トーナメント1回戦でオランダに1―2で敗れて16強に終わった。
◆23年女子W杯 オーストラリアとニュージーランドの共催で7月20日から8月20日まで行われる。オーストラリアでは5都市6スタジアム、ニュージーランドでは4都市4スタジアムが使用され、決勝戦はオーストラリアのシドニーで行われる。今大会から出場国が従来の24か国から32か国に拡大となり、1次リーグは各組4か国、全8組に分かれ、各組上位2か国が決勝トーナメントに進出。アジアからは開催国枠のオーストラリアに加えて、日本、中国、韓国、ベトナム、フィリピンが出場する。