巨人・坂本勇人内野手(34)が17日、沖縄県内で自主トレを公開し、3月開催の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を辞退したことを明かした。昨季は開幕直前を含む3度の故障離脱を経験。メンバー選考大詰めの今月に入り、侍ジャパンの栗山英樹監督(61)との電話の中で、コンディション面でシーズンに集中したい意向を伝えたという。2013年のWBC以降全ての国際大会に出場してきた男が、不退転の決意でペナントレースに照準を定め、復活を目指す。
坂本は断腸の思いを胸に、口を開いた。3月開催のWBC内定メンバー30人に「坂本勇人」の名前がなかったことについて真相を明かし、侍たちへ心からエールを送った。
「栗山監督にコンディションについてや、シーズンに集中したい旨を伝えさせていただきました。すごい緊張感の中で野球をやるのは大変なことですけど、すごいメンバーが集まっている。一野球人として応援したい。頑張ってほしい」
右膝内側側副じん帯損傷を経験するなど、昨季は開幕直前を含めて3度の戦線離脱を強いられた。83試合で打率2割8分6厘も、5本塁打、33打点はいずれもレギュラーに定着した2008年以降ワースト。それでも、侍ジャパンの栗山監督は「勇人への信頼感は抜群にある」とWBC招集の可能性を探っていた。
坂本は13年の第3回WBCから21年の東京五輪まで、主要国際大会に全て出場。日の丸の重み、国際試合の厳しさは誰よりも肌で感じてきた。冷静に自分と向き合い、代表選考が佳境を迎えた年明けに、栗山監督との電話の中で、現在のコンディションでは戦うことができないと伝えた。昨季は不本意な成績だったにもかかわらず、声をかけてくれた指揮官に感謝しつつ、辞退という苦渋の決断を下した。
10年近くにわたって侍ジャパンの顔となってきた男にとってはつらい選択でもあったが、今はもう前に進んでいる。故障防止を念頭に、柔軟性と可動域を意識したトレーニングに着手。新たに胸郭にフォーカスしたエクササイズに重点を置き、運動効率を高め、身体のバランスを整えようとしている。多い日は10種類やることもある。
「年齢的に体が硬くなっているなと思うので、多めにやっています。去年の3回のけがというのを反省して、しっかり体と向き合いながら。けがをしない体で1年間1軍にしっかりいられるように。そこだけを意識して頑張ります」
高卒3年目の中山や合同自主トレを行う湯浅、ドラフト4位・門脇(創価大)ら遊撃奪取を目指す若手は多いが、言葉からは、コンディションさえ整えばその座を渡すことはないという自信が見え隠れする。チーム力向上のため定位置争いは大歓迎だが、譲る気は毛頭ない。
「(湯浅には)技術的な部分で伝えられる部分は伝えていますけど、ライバルでもある。『まだまだ負けないよ』と思いながら一緒にやっています。もちろん、ショートへのこだわりというのは強くある。ショートだから全試合出られないとか、けがをしたとか言われたくない。ショートだからコンバートした方がいいんじゃないかとか、そういうのはすごく嫌だなと」
通算2205安打。歴代最強遊撃手として、ショートへの誇りを何度も繰り返した。8年間務めてきた主将は岡本和に譲った。復活を期す23年。WBC制覇の夢は栗山ジャパンに託し、今年の坂本は自分のため、ジャイアンツのために全てを注ぐ。(中野 雄太)
◆勇人に聞く
―長打力を取り戻したい、と。
「そこが一番難しいところ。ショートで体重が増え過ぎないようにとか、考えないといけないので難しいです。なかなか明確な答えは出ていないです」
―通算300発まで34本。
「それだけ打てれば一番いいですけど、積み重ねでここまでヒットもホームランも打ってきた。何とか打ちたい」
―若手に求めること。
「どうやったら野球がうまくなるのか考えながらやってもらえれば。そこは若いとかベテランとか関係なく。僕は若い選手がどうこうとか考えている余裕がない。自分のことをしっかり考えてやりたい」
◆坂本が出場した主要国際大会
▽13年第3回WBC(4強)2次ラウンドのオランダ戦で日本人初の満塁本塁打など6試合で打率2割4分、1本塁打、6打点。「次も絶対に選ばれるよう努力したいし、その中心にいたい」
▽15年第1回プレミア12(3位)8試合で打率2割、1本塁打、6打点も最優秀守備選手。「この経験を生かしていきたい」
▽17年第4回WBC(4強)6試合で打率4割1分7厘、0本塁打、1打点。準決勝の米国戦に敗れた後は涙を流した。「青木さんからキャプテンシーを勉強させてもらった。一番(の収穫)はそこです」
▽19年第2回プレミア12(優勝)7試合で打率3割8厘、0本塁打、1打点。「みんなで喜び合えたことで五輪にも出たいと強く思うようになった」
▽21年東京五輪(優勝)1次リーグ初戦ドミニカ共和国戦のサヨナラ打など打率3割3分3厘、1本塁打、4打点。遊撃でベストナイン選出。「夢でもあったので金メダルを取れて感無量」