野球殿堂博物館(東京)は13日、今年の野球殿堂入りを発表する。野球の普及発展に貢献した人を対象とする「特別表彰」の候補者に、4年連続で福島県福島市出身の作曲家・古関裕而氏(享年80)が選出されている。古関裕而記念館の村上敏通館長は温かみのある「古関メロディー」が再び全国で注目を浴びることを夢に見て、悲願の殿堂入りを願う。
野球殿堂入りは、日本の野球の発展に大きく貢献した功績を永久にたたえる表彰。競技者表彰と特別表彰があり、古関氏はアマや審判員を含め野球発展に顕著な貢献をした人が対象となる特別表彰の候補。20年から4年連続で名を連ねているが、昨年は当選に必要な9票にわずか1票届かずに涙をのんだ。村上館長は「何度もため息をついてきたので、ぜひとも今年こそという思いは年々強くなる」と振り返る。
古関氏は夏の甲子園でおなじみの「栄冠は君に輝く」(原題・全国高等学校野球大会の歌)をはじめ、巨人の球団歌「闘魂こめて」、阪神の「六甲おろし」とプロ野球だけでなく、早大や慶大の応援歌など、野球関連の曲を多く作曲している。伝統のライバル同士であるチームの応援歌を両方作曲しているが、村上館長が「ご本人はスポーツが苦手であまり興味もなかったようです」と話すように、本人は気にしていなかったようだ。
楽器を一切使わず、頭の中のみで作曲していた古関氏。作曲部屋としていた書斎には3つのテーブルがあり、次々と浮かぶ別の曲を同時に書き起こしていた。
2020年には古関氏と妻・金子さんをモデルとして制作されたNHK連続テレビ小説「エール」(主演・窪田正孝)も放送され、記念館は「影響が本当に大きくて、信じられないほどの人だった」と、長い時には2時間半待ちの大行列ができる盛況ぶりの古関ブームが訪れた。
村上館長は「古関先生の音楽は人を包み込む優しさと温かさがある」。「素晴らしい功績をぜひ認めていただいて、全国にまた古関メロディーがどんどん発信されてほしい」と、今度こそ、栄冠が古関氏に輝く日を待ちわびる。(秋元 萌佳)
◆特別表彰の選出方法 日本プロ野球組織の関係者、社会人野球および学生生徒等の公式団体の役員、野球に関係のある学識経験者から14人が委員となって投票される。候補者名簿の中から、委員が3人以内の氏名を投票用紙に記入し、無記名投票。投票で出席委員数の75%以上の賛成を得た候補者が野球殿堂入りとして推薦される。