【明日の金ロー】”脱宮崎駿監督”をテーマに、北海道を舞台に少女の成長が描かれる「思い出のマーニー」

スポーツ報知
次第に心を通わせていく杏奈(左)とマーニー(C)2014 Studio Ghibli・NDHDMTK

 13日の金曜ロードショー(後9時)は、先週に続きスタジオジブリ作品が登場。「借りぐらしのアリエッティ」の米林宏昌監督の第2作「思い出のマーニー」(2014年)が本編ノーカットで放送される。ジブリ初の「ダブルヒロイン」の同作は、米アカデミー賞の長編アニメ映画賞部門にもノミネートされた。

 養父母に育てられた12歳の少女・杏奈は、ぜんそくの療養のために養母の親戚が住む海辺の村でひと夏を過ごすことになる。村には、入り江に面して建つ古い洋館があった。「湿っ地(しめっち)屋敷」と呼ばれているその洋館に、なぜか心を引かれる杏奈。夢にまで出てくるようになるが、そこには杏奈と同世代の金髪の少女・マーニーが住んでいた。やがて、周囲に対し距離を置いて生活をしていた杏奈は、マーニーにだけは心を開いていく…。

 「借りぐらし―」では宮崎駿監督が脚本を担当(本作にも参加している丹羽圭子さんと共同)していたが、本作は米林監督自身が脚本を手掛けた。ジブリ映画としては、宮崎監督と高畑勲監督の「両巨頭」が関与していない初の作品となる。公開当時、米林監督は本作について「宮崎監督のカラーが出ない作品を作る」ことが最大のテーマだったと明かしていた。

 その象徴だったのが、物語の舞台を北海道とすることだった。当時、宮崎監督は自身の「風立ちぬ」を製作する合間に、米林監督に様々な提案をしていたという。その際、宮崎監督が舞台として挙げた場所が瀬戸内。それを聞いた米林監督は「『崖の上のポニョ』みたいな感じでイメージに合わない」と考え、宮崎監督の意見を却下し、原作の英国文学の風景を損ねることのない、湿地のある場所―北海道を選んだのだった。

 北海道の湿地帯といえば、多くの人の頭に浮かぶのは釧路湿原だろう。杏奈がマーニーと出会う土地の名前は架空のものだが、物語の冒頭、杏奈は札幌―釧路間を結ぶ特急「スーパーおおぞら」に乗るシーンが描かれている。また、最初に「岸崎別駅」に降り立つ時に乗って来た1両編成の普通列車は根室行き。JR花咲線内の駅をイメージしていることは間違いない(駅舎に関しては、北海道の別の地域の駅をモデルにしているとも言われている)。

 杏奈の性格に関しても、これまでの宮崎監督作品に登場する少女たちと比較すると、やや異なるイメージがある。ナウシカ、シータ、キキ…。宮崎監督の描くヒロインたちは、いずれも生命力に満ち満ちている。だが杏奈は、自らの感情をどう出していいのか悩む女の子。時には「暗い」とも思える、無表情さでたたずむシーンも登場する。

 この点においても、”脱宮崎監督”の意識があったという。当時、米林監督は杏奈について「彼女みたいな感情を持っている女の子は、現代にはたくさんいると思う。だから、無表情の『普通の顔』をする気持ちが伝わると思うんです」と語っていた。

 杏奈は自分の弱さを認識し、そんな自分が嫌いだったことに加えて、弱さを他人に知られることを怖がっていた。ところがマーニーと出会い、交流することで自らの弱さを容認できるようになり、周囲の助けに対して素直に受け入れられるように成長していく。原作は半世紀以上も前のものだが、物語を現代に移したことで今この時代の少女が持つ繊細さを描き出されている。(高柳 哲人)

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