ふかわりょう、48歳の仕事論「できることと求められることの乖離や違和感、楽しみつつ」…インタビュー前編

スポーツ報知
エッセイ集「ひとりで生きると決めたんだ」が好評のふかわりょう。書くことを「タレントとしての筋トレ」と表現した(カメラ・小泉 洋樹)

 タレント・ふかわりょう(48)のエッセイ集「ひとりで生きると決めたんだ」(新潮社・1540円)が好評を博している。「厄介なほど繊細」なことから、自身を「敏感中年」と称する48歳。独特の感性から描かれた22編が胸に響く一冊だ。生き馬の目を抜く芸能界でオンリーワンの立ち位置を築いた背景、そして意味深なタイトルに込めた思いとは。(加藤 弘士)

 ◇書くことは「タレントとしての筋トレ」

 ふかわといえばテレビに映る「シュールの貴公子」、さらには「ROCKETMAN」としてのDJ、音楽活動がフィーチャーされてきた。この一冊にふれると、極めて優れたエッセイストであることが分かる。嫉妬するほど文章が上手い。自身にとっての「書くこと」を「筋トレ」と位置づける。

 「言葉にしていくと、頭の中が整頓されていく-みたいなことがあるじゃないですか。書くことによって何か刺激されるのか、新たなものが生まれたりだとか。メールマガジンで短めの文章を毎週作っていたんですが、自分の中では筋トレみたいな位置づけだったんです。文章のためのというよりも、書くことを探してアンテナを張る、言葉を選ぶ、みたいな。それは言葉の闘いなので、ある種の根幹。一番大事なタレント業の中枢を担っている部分なので、そこはずっと意識的にやってきたことなんです。ある意味、タレントとしての筋トレって感じでしたね」

 自らを「厄介なほど繊細」と称し、「重箱の隅に宇宙を感じる」と記す。今作はその独特の世界観を堪能できるエッセイ集だ。読み進める度に、思う。自身の美しく生きたいという価値観と、ふかわがデビューした90年代から現在に至るまでのお笑い界の空気には、いささかの乖離が見受けられる。どのように折り合いをつけ、生き馬の目を抜くこの世界をサバイブしてきたのか。

 「20代、30代、40代で自分がやろうとしていることと、求められていることが、常に一致しているわけではないんですが、年を重ねて、20代の頃に比べてそれらがだいぶ重なりつつあるかなとは思います。でもそれは、20代の頃から完全一致しているのが、必ずしもいいとは思わない。できることと求められることの乖離や、この違和感が僕は大事だと思っています。そのしっくりこない感じを楽しみながら、時に苦しみながら、今日まで来ていると思うんです」

 ◇糖度を蓄える…冬の時期って大事

 20代の頃の先輩芸人・東野幸治との思い出をつづったエッセイ「悪魔は愛情でできている」は、本書の中でも異彩を放つ。丁寧な暮らしを希求してきたふかわが、強烈な異文化に翻弄されながらも、その日々を懐かしく温かみのある筆致で振り返っているのが印象的だ。

 「まさに20代でしたね…。すごく粗削りというか、とがっている部分もあり、若さもあり。それは貴重な時間だと思うんですよね。そこでいろんな世の中に揉まれ、角が取れていく。角が取れて、丸みを帯びているかもしれないけれど、やっぱり中にある部分は変わらなくて。核となる部分に大きな変化はなく、自覚して、表現として結実していくのは年を経てからですよね。40代になって、そういうものがみなさんにもぎ取ってもらえる感じになったと思う」

 決して自らが求めた仕事ではない「体を張った笑い」などにも真摯に取り組んできた。それは決して無駄ではないと言う。

 「糖度を蓄えるには、ある種の冬の時期って大事だと思うので。今48歳ですけど、そういうのが今、出汁(だし)として出ているんじゃないかな。これは20代には出ない出汁だと思うんです」

 ◇より増幅していった「小さきものへの共感」

 エッセイのテーマは現在進行形のふかわだけでなく、幼少期や青春時代の回想も楽しい。高校時代は400m走の陸上選手であり、生徒会長も務める一方、捨て犬を連れて帰って20年飼ったりと、弱きもの、小さなものに対する細やかな共感も読み所の一つと言える。

 「結構、子どもの頃からそういうタイプだったんです。野良犬がからかわれたり、みんなのおもちゃにされるのを見ていてつらかったし。だから連れて帰ったりとか。ただ自分が学生生活を経て、この世界に入っていろんな厳しい環境に置かれて、それがより培養されたというか、育った気はしますね。そういう小さきものへの共感が、そのままフェイドアウトしちゃう人もいるかもしれないけど、僕はなんかどんどん増幅していった感じです」

 大人になると、そのあたりの感覚が鈍感になる。鈍感になることが大人になることとも思える。なぜ優しさが増えていったのか。

 「もしかすると…ずっと一人で向き合ってきたからかな、とも思うんですよね。アイルランドに一人で行ったりとか、基本一人で旅をしてきましたから。だからこそ、出会ったものを大切にしたい。これを失うのが怖いということと、パートナーとか子どもとか眩しいものができたら、相対的にその影になってしまうじゃないですか。家族とかが眩しすぎて…それを恐れているところがあるんですよ。その意味で、今回の本はこのタイトル…『ひとりで生きると決めたんだ』になったんですね」

 その姿勢は決して後ろ向きなものではない。ふかわは書く。「いま私が見ているものが、ひとりだからこそ見える世界なら、私はこの目を失いたくない」と。

 「『人はそもそも一人なんだ』という意識を持つことは大事だなと思っているんです。夫婦でも家族でも、そもそも一人であって。関係性によって社会の立ち位置というのはありますが、一人でいることが決して不自然ではないという風な空気に、世の中がなってほしいという願いもありますね。寄り添ったり、助け合ったりも大事ですけど、それぞれが一人なんだというのを尊重するのも、広い意味で助け合っていると思うんですよね」

【後編に続く】

 ◇ふかわりょう 1974年8月19日、横浜市生まれ。慶大経済学部在学中の94年、長髪に白いヘア・ターバンを装着し、「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。「シュールの貴公子」から「いじられ芸人」を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。また、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムを多数リリースしている。

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