井上尚弥スーパーバンタムの標的フルトン激白「井上との試合価値ある。魅力的」

スポーツ報知
井上尚弥

 プロボクシングWBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者のスティーブン・フルトン(28)=米国=がこのほど、スポーツ報知のインタビューに応じた。今年、スーパーバンタム級転向を明言している世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(29)=大橋=の最大のライバルと目される男が、自身の野望や日本が誇るモンスターについて語った。(取材=米ロサンゼルス・宮田有理子通信員)

 ―故郷のフィラデルフィアはボクシングの豊かな歴史を持つ町です。現在の練習拠点は?

 「今はヒューストンにいます。フィラデルフィアとヒューストンに家があり、あくまでフィラデルフィアが拠点だけど、この時期は寒い。なにより自分にとっての良いスパーリング相手がたくさんいるのはヒューストンの方。試合が決まってからのキャンプでは、トレーナーであるワシー・ラヒームと様々なタイプの練習相手を求めて各地に赴きます。ロサンゼルスにも行ったりするよ」

 ―宗教のことを聞いてもいいですか?

 「私はムスリム(イスラム教徒)です。父母がそうだったからです。そのため、クリスマスだから祝うとか休むという習慣はありません。ラマダン(断食月)は、昼間は何も食べないけど、トレーニングは休みません」

 ―今、どのスキルに絞り、練習をしているか。

 「スピードではなく、しっかりと打つ、しっかりとパワーを伝える、という部分を重視しています」

 ―井上尚弥対ポール・バトラー戦を見た感想を聞かせて下さい。

 「バトラーはなるべくしてあのような結末(井上の11回KO勝ち)になった。井上の名前を知ったのは昨年の初め頃だったけど、対戦が実現すれば、いい試合になるだろうね」

 ―井上との対戦が関心を集める理由の一つとして、井上にとって未知のファイトスタイルをあなたが持っているということがある。

 「そういうことなんだろうと理解している。井上は確かに良い選手だ。彼が『モンスター』と呼ばれるのはどんな相手でもKOしてしまうからだろう。でも私はKOされないけどね」

 ―井上にKOのチャンスを与えないというわけか。

 「私のこれまでの対戦相手は、みんな『パワーで勝つ』と言ってきたが、全く気にならない。私にもパワーはあるし、パワー以外の良さがあるからね。その意味では、井上も同じだ。井上もパワーだけじゃなく、素晴らしいボディワークを備えるオールラウンドな選手だ。彼のすべてを知っているわけではないが、私は井上のパワーや他に持っている能力に対応できると思っている」

 ―自分のファイトスタイルをどう分析するか。

 「万能型だと思う。アウトボクシングだけでなく、インファイトもできる。私はどんな戦い方も可能で、長所の一つだ。試合中に調整し、対応できる。リングに立つと、脳がすごいスピードで働くんだ。練習のシャドーボクシングでも想像を働かせて動いている。どんなパンチを選んで、どうチャンスを作り出すというふうに」

 ―スーパーバンタム級には井上以外に多くの対戦候補がいたと思うが、日本で戦うことを考えたことは?

 「考えたことはなかったけど、日本に行って戦う道理はある。日本に行くに値する試合であるならば、来日することに全く問題はありません」

 ―次戦でブランドン・フィゲロア(米国)とのWBC世界フェザー級暫定王座決定戦に臨み、その交渉が進んでいると報じられた。それはあなたが望む方向性か。

 「そうだ。おそらく近いうちに発表されると思うのだが」

 ―スーパーバンタム級には戻らないのか。

 「いや、スーパーバンタム級に戻る可能性は大いにある」

 ―それはスーパーバンタム級での4団体統一がゴールだからか?

 「イエス。それこそが私が望んでいることだ」

 ―あなたはスーパーバンタム級では背が高い方(169センチ)だ。デビュー以来、この階級で戦っている。

 「この階級では大きい体格だろう? 体重を作るのが大変なのは確かだ。ましてやフェザー級に上げ、また戻すことになると、今までの10倍は自分を厳しく律しなければならない」

 ―ボクサーとしての最終目標は?

 「今はいろいろ考え直しているところだ。2014年のデビューから、4団体統一を目指してやってきた。スーパーバンタム級の残る2つのタイトルを持っているムロジョン・アフマダリエフ(WBA・IBF統一王者)との試合を待つ時間は長くなっている。その間に私の体は大きくなり、この階級に留まるには多くの犠牲を払わなければならない。4団体統一は夢に変わりないが、ただ待つというのはどうなんだろうと考えている」

 ―なるほど。

 「フェザー級で戦うプランはそういう考えの中で出てきたものなんだ。4団体統一のチャンスを待つために、戦うに値しない相手とスーパーバンタム級で戦うことに意味があるだろうか…ともね。もはやアフマダリエフ以外に、この階級で戦う意味を見出すことができないんだ。一度、フェザー級で戦って、これからを考えてみる」

 ―その意味では、階級を上げた井上がモチベーションになると言えるか。

 「その通り。井上との試合なら価値があるし、自分にとっても魅力的だね。私がフェザー級での試合を終えた後、戦うことは可能だよ」

 ◆尚弥転級へ「挑戦」

 〇…昨年12月の4団体統一戦後、井上は公の場に姿を見せず、次戦に向けて充電を図っている。5日に更新した自身のツイッターでは「この先はデカい奴に挑んで行く、自分自身への挑戦でもある。今年は『挑戦』 これに限る」などと投稿。また、年明けには米興行大手「トップランク」が選んだ2022年の年間最高殊勲選手、年間KO賞にも名前を挙げられるなど注目を集めている。

 ◆スティーブン・フルトン 1994年7月17日、米フィラデルフィア生まれ。28歳。アマチュアで競技を始め、2013年に米アマ最高峰のナショナル・ゴールデングローブ優勝。2014年10月にプロデビュー。21年1月、プロ19戦目でWBO世界スーパーバンタム級王座を獲得。同年11月、WBC同級王者ブランドン・フィゲロア(米国)に判定勝ちし、2団体統一に成功。成績は21戦全勝(8KO)。身長169センチの右ボクサー。

 ◆スーパーバンタム級の世界戦線の現状

 井上が今後の主戦場に考えているスーパーバンタム級は、2人の王者が4つの主要タイトルを保持している。WBC・WBO統一王者フルトンと、WBA・IBF統一王者のムロジョン・アフマダリエフ(28)=ウズベキスタン=だ。

 フルトンはスピード豊かな攻守が武器で、プロ19戦目の21年1月にWBO王座、同11月にWBC王座を獲得した。身長169センチ、リーチ178センチと、この階級では大きめの体格で、身長165センチ、リーチ171センチの井上を上回る。

 アフマダリエフは16年リオ五輪出場経験がある技巧派のサウスポーだ。20年1月にプロ8戦目でダニエル・ローマン(米国)を破り、一挙に2冠を獲得。21年4月には当時IBF暫定王者だった岩佐亮佑(セレス)に5回TKO勝ちした。

 井上はスーパーバンタム級に転向すれば、当面はフルトンとアフマダリエフが標的となる。その場合、通例では統一王者は転級先で世界1位にランクインされることが多く、井上にも適用されるとみられる。交渉次第では転向初戦で王者に挑戦する可能性が出てくる。

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