【春高バレー】古川学園のエース・タピア、ドミニカ共和国から母が駆けつけ「ママに日本一を見せられた」卒業後は日本の大学へ

阿部明音(右)と抱き合って喜ぶ古川学園のタピア・アロンドラ(中央)
阿部明音(右)と抱き合って喜ぶ古川学園のタピア・アロンドラ(中央)

◆バレーボール 全日本高校選手権 ▽女子決勝 古川学園3(25―19、22―25、23―25、25―17、15―6)2誠英 (8日・東京体育館)

 女子決勝が行われ、2年連続の決勝に臨んだ古川学園(宮城)が、誠英(山口)を3―2で下し、優勝を飾った。古川商高時代(現在は校名変更)の1999年に制して以来、23大会ぶり4度目の頂点に立った。

 ドミニカ共和国出身の留学生で、長身196センチのタピア・アロンドラ(3年)がチームを引っ張った。手の甲には黒のマジックペンで、自身で記した「日本一」、もう片方には後輩に「SMILE」の文字を書いてもらい、決戦に臨んだ。

 第1セットから強打で圧倒。1―2と後がなくなった第4セットでは随所でスパイクを決めきり、チーム最多36得点の活躍。今大会の最優秀選手に選出され、「去年は決勝で負けて、悔しい思いをした。この1年間はバレーボールも、生活も全てを春高につなげてきた。今年は日本一になることができてうれしい。とても幸せ」と雪辱を果たし、試合後は涙があふれた。

 昨年は決勝で就実(岡山)に1―3で敗れ、2位に終わった。2年生だったタピアは泣き崩れる先輩たちの肩に手で触れ、「来年は絶対に日本一になります」と約束。先輩たちの思いも背負って立った舞台で、その約束を果たした。

 苦しいことも多い3年間だった。3年前、母親と「絶対に日本で3年間やり切ります」と決めて日本にやってきた。だが、1年時は「食べ物は大丈夫だったけど、練習でこんなに厳しいことを言われたのは初めてで。それが怖くて、私、ここは合わないな」と試合にも出られず、母国に「帰りたい」とホームシックも経験し、どん底だった。

 それでも3年間、苦しい環境に身を置いたのは、日本で出会った大切な仲間が居たからだ。「この3年間、みんなにいろんなことを教えてもらった。それで日本語も覚えたし、ドミニカでは分からなかったことかも」。この日は母親が1万キロ以上離れた母国から応援に駆けつけた。「ママに日本一を見せられてうれしい。ドミニカに帰ったら他の家族とか、みんなに話すみたい」と笑い、少しだけ胸を張った。

 高校を卒業後は日本に残るのか、母国に帰るのか、さまざまな選択肢があった。それでも日本の大学に進学することを決めた。「まだまだ日本でいろんなことを学びたい。違うチームでも一番の外国人になりたい。もっと日本語もうまくなれるように頑張る! 」。努力を惜しまない大器は、次の夢に目を向けた。

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