【箱根駅伝】区間最下位の青学大・西川魁星に伝えたい 「おじさんになった時、必ず誇りに思える」と

箱根駅伝の激闘翌日、(左から)快走した岸本大紀、ブレーキした西川魁星、欠場した中村唯翔はそろって笑顔を見せた(カメラ・竹内 達朗)
箱根駅伝の激闘翌日、(左から)快走した岸本大紀、ブレーキした西川魁星、欠場した中村唯翔はそろって笑顔を見せた(カメラ・竹内 達朗)

 第99回箱根駅伝(1月2、3日)で3位となり、連覇を逃した青学大は激戦から一夜明けた4日、第100回大会に向けて早くも始動した。

 相模原市のキャンパス内で行われた練習にはチーム全員が参加し、その中には6区で区間最下位と大苦戦した西川魁星(4年)の姿もあった。9区区間賞の岸本大紀(4年)や故障のため欠場した中村唯翔(4年)らと笑顔を見せながらストレッチなどを行っていた。私は、その光景を見てホッとした。

 往路3位の青学大は、復路スタートの6区で西川が1時間3分23秒の区間20位のブレーキ。それが響き、連覇が遠のいた。

 5区に出場予定だった若林宏樹(2年)が1日に体調不良を訴え、欠場。代わりに6区出場予定だった脇田幸太朗(4年)が5区を走り、区間9位。脇田に代わって6区を走った西川が大苦戦。連覇へ方程式は大会前に崩れていた。

 群馬・市立太田高出身の西川は、努力に努力を重ねて、4年目の箱根駅伝で学生3大駅伝デビューを果たした。卒業後、医薬品メーカーに就職し、競技の第一戦から退く西川にとって最初で最後の晴れ舞台だったが、苦しい20・8キロとなった。東京・大手町のゴールで仲間と合流した西川は悔し涙を流していた。タイミングを見計らって私が話しかけると、時折、言葉を詰まらせながらも誠実に答えてくれた。

 「体が動かなくて焦って、頭が真っ白になってしまいました。レースのことはほとんど覚えていません。函嶺洞門(17キロ地点)で家族が応援に来ていたはずですけど、全く分からなかった。でも、残り1キロで往路組の3人(1区・目片将大、2区・近藤幸太郎、4区・太田蒼生)が一生懸命に応援してくれていることだけは分かりました。そこから最後の力を絞り出したつもりですけど…。僕が1年生の時に、最初で最後の箱根駅伝で6区を走って活躍した谷野航平さん(区間3位)に憧れて、僕も谷野さんみたいになりたい、と思って、ずっと下りの練習をしていました。6区出場が決まったのは1日の昼でした。(12月29日に)6区登録されたので、1月3日にしっかり走るという準備をしていたつもりでした。でも(脇田に交代予定だったので)心のどこかで『走らないから』という気持ちがあったのかもしれません…。優勝がチーム目標だったのに、僕が流れを断ち切ってしまった。それでも、また、3位まで順位を戻してくれた。チームメートには『本当に申し訳ない。ありがとう』と言いたいです」

 それから、ちょうど24時間後。原晋監督の承諾を得た上で、西川に再び声をかけると、昨日より明るい表情で話した。

 「昨日、選手寮に戻ってから、みんなで箱根駅伝の録画を見ました。自分が走っているシーンを見るのはつらかったけど、みんなが笑いながら『西川、頑張れ!』とテレビに向かって叫んでいました。イジってくれてうれしかったです。感謝しています。本当に仲間に恵まれました」

 私の数少ない自慢だが(自慢ではないかもしれないが)ブレーキした選手の気持ちはよく分かる。30年以上前。東洋大時代に昭和最後(1989年)と平成最初、2回目(90、91年)と3度、箱根駅伝に出場した。結果は8区14位、3区13位、3区14位と凡走を連発(当時は出場15校)。せっかくの晴れ舞台で失敗した悔しさ、チームメートや応援してくれる人々への申し訳なさ…多くの負の感情は今でもはっきりと覚えている。

 当時の東洋大は予選会通過校。チームも自分自身も出場することで精いっぱいだった当時の私と、前年覇者の青学大メンバーでは同じブレーキでもダメージの大きさが違うが、それでも、西川君に伝えたい。いや、西川君だけではなく、ブレーキしてしまった選手たちに伝えたい。

 今は絶望感でいっぱいだと思うけど、将来、おじさんになった時、箱根駅伝でブレーキした悔しさや悲しみよりも、箱根駅伝を走れた喜びの方が、きっと大きくなる。

 箱根駅伝を目指して仲間たちと走った日々を誇らしく思う時が、必ず来る。

 そう思うし、そう願っています。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)

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