「#ドクターに言われた衝撃的な言葉」のハッシュタグ付きでツイートされた白文鳥コッコの診察の様子が小鳥好きの興味をそそっています。
飼い主「うちの子がハゲてしまって」
先生「2歳の男の子ですか」(検便検査・触診)
先生「異常ないですね。鳥も男性ホルモンが多くてハゲる事もありますよ」
飼い主「男性ホルモン…」
先生「毛生えサプリ出しときますね」
飼い主「毛生えサプリ…」
深刻さを感じさせない問答ですが、マッチョな単語がどうも気になります。文鳥の毛生えサプリなんてあるの? 鳥に効くなら人間にも効くのでは? 気になって仕方ないので、動物行動学が専門の摂南大学農学部助教・池田裕美先生、教えてください!
-鳥のハゲに男性ホルモンが関係しているってウソみたいな話です
「いえいえ、鳥にも基本的には人間と同じように男性ホルモン『アンドロゲン』と女性ホルモン『エストロゲン』が存在するんですよ。アンドロゲンの中でも『テストステロン』という物質名を耳にしたことはないでしょうか。コッコちゃんを診察した先生はテストステロンのバランスが崩れているので毛が抜けているのでは…とおっしゃっているのだと思います」
-そういえば人間男性の更年期の原因がテストステロンの減少だと聞いたことがあります
「鳥に関してテストステロンは攻撃性や鳴き声、繁殖期の羽の色鮮やかさなどに影響を及ぼしているようです。いわゆる男性らしさの基といえるホルモンで、羽毛も鮮やかな色になればなるほどメスの目を惹く役割を持ちます。一年の間でも季節により変動することも解明されています。人と同じように分泌のバランスが崩れると抜け毛の原因になります。『男性ホルモンが多くてハゲる事もありますよ』という先生のコメントの部分ですね」
-毛生えサプリを処方されたようですが…
「たとえばビタミンAは皮膚に関わる栄養素で不足すると抜け毛につながる可能性があります。内容は分かりかねますが、サプリとのことなのでおそらく栄養補給の意味で処方されたのではないでしょうか。ビタミン以外にも、男性ホルモンの合成をバランスよく行うために関わっている栄養素や、換羽期に不足しがちな栄養素もあります」
-ではコッコちゃんは深刻な病気ではないのですね
「鳥も自分の羽を引き抜いたりすることがありますが、抜けているのがくちばしの上の部分みたいですからその心配はなさそうですね。犬や猫と同様に、鳥もストレスが原因で同じ部位を自ら傷つけたり羽を引き抜き続けたりする『常同行動』を示すことがあるので、首から下の羽毛がごっそりと無くなる子もいます。ただコッコ愛にあふれている飼い主さんですのでストレスで引き抜いている心配は無いでしょう」
「羽が生え替わる換羽期という場合もあるでしょうし、これまで通り日々の様子を観察し、今回の件のように少しでも異変だと感じることがあれば獣医師さんに診ていただければ大丈夫ではないでしょうか。本人(鳥)もハゲてしまったことに気付いているかは分かりませんが、鳥類の羽の生え始めにみられるツンツンした筆毛(羽鞘と呼ばれる薄い膜に包まれた羽)が出てくるのが待ち遠しいですね」
◆池田裕美(いけだ・ひろみ) 摂南大学農学部応用生物科学科助教。1988年、熊本県出身。鹿児島大学農学部卒業、九州大学生物資源環境科学府資源生物科学専攻・博士課程修了。専門は動物行動学、動物栄養学。雨の日の軒先で保護した茶トラの「とら」と暮らす