今季から指揮を執る広島の新井貴浩監督(45)が新春インタビューに応じ、“最高の演出家”になると誓った。今オフは自身が話題の中心となったが、シーズンに入れば「選手が主人公」。若手の育成を掲げる一方、ともにリーグ3連覇を成し遂げたベテランに対しては「俺からしたら、もう終わっていくの?という気持ち」と“喝”。自身も味わったことのない1984年以来の日本一に導く決意を語った。(取材・構成=畑中 祐司)
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2018年限りで現役引退して4年。「新井監督」としてチームに戻ってきた。
「指導者になることは、あるのかな~みたいな漠然とした感じだった。監督になるイメージはなかった。すごく期待していただいていると感じるし、誇ってもらえるように、自慢してもらえるチームを作っていきたい」
チームは自身の引退後、4年連続Bクラスに沈む。掲げるのは「育成」と「勝利」。その両立を成し遂げるため、リードオフマンとして3連覇を支えたベテランの名前を挙げた。
「若い選手だけでは勝てない。長いシーズンを戦っていく上でベテランの力が必要。特に(田中)広輔。俺からしたら『えっ? お前、もう終わっていくの? はい上がってこいよ』と。優勝を経験したメンバーがぐいぐい引っ張っていってほしい」
近年低迷の一端は“鬼門”の交流戦。昨季も3季連続、12球団最多6度目の最下位に沈んだ。
「伝統的に一種のアレルギー反応みたいなものがあるのかなというふうに見ていた。劣っている訳ではない。交流戦はポイント。スコアラーが早い段階から動いてくれるし、しっかり対策はするけど、あまり交流戦だからという空気は出したくない。『関係あるか? 今までとは違うぞ!』と。そういう空気を作りたい」
3月31日の開幕戦の相手は、広島工の先輩・高津監督が率いるヤクルトだ。
「ある意味、チャンピオンチームに対しては考えやすい。挑戦者なんだから。当たって砕けちゃダメだけど、思いっきりぶちかませ、みたいな精神。今年のキャッチコピー(『がががが がむしゃら』)じゃないけど、どれだけ“がむしゃら”になって、勝ちに向かってみんなで進んでいけるか」
求められるのは5年ぶりのAクラスではなく、リーグ優勝。その先の日本一も見据える。
「3連覇した時も3回チャンスがありながら、日本一になれていない。自分というより、ファンの人が待っていると思う。自分と一緒に日本一になれずに悔しさを味わったメンバーがいるのも強み」
就任会見では「皆さんの気持ちを真っ赤に燃えさせる」と所信表明した。オフは、周囲の期待とともに自身が話題の中心となった。
「シーズンが始まれば、自分がカクテル光線を浴びることはないと思っている。あくまで主人公はプレーヤー。選手が演者さんで、僕らは演出家として選手たちを輝かせていく」
◆新井 貴浩(あらい・たかひろ)1977年1月30日、広島県生まれ。45歳。広島工から駒大に進み、98年ドラフト6位で広島入団。2006年WBC日本代表。07年オフにFAで阪神移籍。08年北京五輪野球日本代表。15年に広島復帰。16年に通算2000安打を達成し、25年ぶりリーグ優勝に貢献してMVP受賞。本塁打王(05年)、打点王(11年)1度。18年限りで引退。通算2383試合(歴代13位)で2203安打(同21位)。打率2割7分8厘、319本塁打(同39位)、1303打点(同17位)。