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【相撲のウラ道3】若元春が新小結で迎える初場所 フランスからの来客はその出世を5年以上前に見抜いていた?

ボヌベーさん(左)と幕下時代の荒篤山
ボヌベーさん(左)と幕下時代の荒篤山

 年が明けましたが書き残したことがあるので、敢えて書きます。昨年12月19日未明に行われたサッカーのW杯決勝。アルゼンチンと対戦したフランスを見ていて思い出したのは、かつて日本代表のコーチにジャッキー・ボヌベーさんというフランス人の方と取材を通じて知り合ったこと。彼は当時(2015年)、初めての日本暮らしで日本文化に大変興味を持っていた。

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 「一度、スモーを見てみたい」こう相談されてチケットを手配した記憶がある。その後、私の担当が相撲に代わっても知人を通じて連絡があった。2017年の8月だった。

「娘が夏休みを利用して来日する。スモーのトレーニングを見ることはできないか」

 そのときはコロナ禍前で部屋の親方が了承すれば可能だった。ただ時期的なタイミングが悪く、夏真っ盛りのため力士たちは巡業や合宿で地方に出張中…。東京で稽古をしている部屋が限られていた。そんな中で偶然にも東京の部屋で稽古をしていたのが荒汐部屋だった。その当時、師匠だった元小結・大豊の先代荒汐親方には快諾を頂いた。

 荒汐部屋は外から稽古を見学できるように稽古場がガラス張りになっている。所在地が中央区なので外国人観光客も多い。帝国ホテルのコンシェルジュも「観光スポットに」と海外からの宿泊客に伝えることもあるという。

 その状況は知っていたので「外から稽古を見られたら」と思い部屋に出向くと師匠は部屋の中に通してくれた。ボヌベーさん親子は間近で見る力士の申し合いの迫力に圧倒された様子で、頭からぶつかり合ったときの音が稽古場に響くたびに「オウ」と驚きの声をあげていたことを思い出す。

 終了後にボヌベーさんはサムライブルーのユニホームにサインをして記念の品として師匠に手渡した。それまでなら普通の稽古見学で終わったのだが、その後ボヌベーさんはとうとうと感想を語りだした。

 「見ていた中では背の大きなスモーさんが強そうに見えた。彼のランクは? まだプロ(関取)じゃないんだ。じゃあこれから強くなるね。それと丸く筋肉のついた若いスモーさんもパワーがあるじゃないか」

 彼がそう指摘した力士が当時、幕下9枚目の若元春と幕下37枚目だった荒篤山だった。荒汐部屋は当時、関取が現師匠の蒼国来のみで、「これから」という雰囲気の部屋だったが5年以上の歳月が流れて荒篤山は幕内を経験し、若元春に至ってはこの初場所で新小結だ。

 競技は違っても一流のアスリート(ボヌベーさんはフランスを代表するDFだった)は指導者になっても、選手の素質や伸びしろを“見抜く目”があるものだと納得してしまう。

 そんな思いにふけりながら2023年の年明けを迎えました。

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