◆バドミントン ▽全日本総合選手権 最終日(30日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)
男子シングルス決勝で、世界ランキング18位の桃田賢斗(NTT東日本)が、同17位の西本拳太(ジェイテクト)を21―11、21―16で下し、2年ぶり5度目の日本一に返り咲いた。
桃田は攻め抜いた。持ち味の守備力を生かしてベースを作りつつ、要所ではクロスへのスマッシュを惜しみなく打ち切った。西本は、A代表で海外転戦をともにする同い年のライバル。「きっと(決勝に)勝ち上がってきてくれると思う」と待ち受けていた相手に、技術と力を出し切り、タイトルをつかんだ。
攻撃は、24年パリ五輪への道に大きく関わる。昨年11月に3年間守った世界ランキング1位から陥落。現在は、日本勢3番手の18位だ。日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチは「チャンスが来ても、70%くらいの攻撃だと、(拾われて)相手にラリーを続けられてしまう。昔は打っていたけど、今は打っていない。来年どこまでカムバックできるのか。(攻撃力を)取り戻して欲しいですね」と願っている。攻撃姿勢を貫いて手にした日本一は、来年へと弾みになりそうだ。
20年1月の交通事故で、右眼窩底骨折。一時はシャトルが二重に見えた。数か月、本格的な練習から離れたこともあり「事故の影響で、それまでやってきたイメージはゼロになった」と率直に明かす。国際大会で11度優勝し、ギネス記録になった2019年の翌年だった。心にこたえた。「あれだけ勝ってたのに何でだよ…って。でも、あれを追い求めるのはもうやめた。葛藤もあったけど、できることをやろうと思う」。
年齢も重ね、次々若手も台頭する中「いつまでコートに立てるかは分からない。自分が引っ張る時代は、もう終わりが近い」という思いも芽生えている。世界ランク1位で臨んだ東京五輪。金メダルに最も近いと言われていた男は、1次リーグ敗退の無念を嚙みしめた。涙に暮れた21年7月28日から、1年と5か月余り。五輪と同じ会場で、桃田は再起の頂点に立った。
★桃田賢斗(ボレーの強打で優勝を決め、大の字になって喜びを嚙みしめた)「この1年間、苦しいことばかりだった。応援してもらえて、今日は納得いく試合ができた。西本とはずっと、もう一番、(合宿などで)一緒に生活する時間が長い。手の内も知っているし、弱気になっているとか、いい顔をしているとか、分かる相手。我慢比べになると思ってプレーした結果、自分の方が最後気持ちが少し強かったと思う。ネットとかでは『あの時の桃田はいない』とか『桃田の時代は終わった』とか。でも、やっている本人は終わりたくない。まだまだ強くありたい。もっともっと、強い桃田賢斗を見せていけたらいいので応援お願いします」