■中村仁郎 プロ1年目に結果は出なかった。しかしすっと背筋を伸ばしてパスを受ける姿に、特別な選手だけが持つ“華”を感じさせたのが、G大阪MF中村仁郎(19)だった。2年目の今季は、ポヤトス新監督の下で飛躍を期待されるひとりだ。
昨季も片野坂知宏監督にチャンスを与えられ、5月4日の札幌戦ではJ1初先発を飾った。そこから4試合連続スタメン出場。レギュラー奪取に片手をかけたが、得点という結果は残せなかった。8月に片野坂監督が解任されると、その後は残留争いの中で出場機会は与えられず。リーグ戦は9試合0得点。これが厳しい現実だった。
165センチと小柄なレフティーは、ドリブルのキレと鋭い左足のキックが武器のパリ五輪世代。プレースタイルは日本代表MF久保建英(21)=Rソシエダード=に重なる部分も多く、本人も「目標にしている選手」と語る。ボールを持てばカットインからシュート、と言う自らの形を披露した場面もあった。1試合の中でそのプレーを発揮できる回数が限られていたことは課題。しかし一瞬のきらめきは、数が少なくても見ているものの脳裏には残った。
そんな中村が目を奪われたのが、世界最高峰の技術だった。今夏、7月25日に行われたパリSGとの親善試合。中でもブラジル代表FWネイマールのプレーにくぎ付けになった。身体能力に頼らず、駆け引きや技術で勝負する姿に「試合が終わってもワクワクしている。将来、こういう場所でサッカーをやるために頑張るしかない」。欧州移籍を夢見るアタッカーは、目を輝かせていた。
現代サッカーではフィジカルの要素が強まっており、技術を売りにするタイプも、攻守に激しいプレーを求められる時代になった。しかしカタールW杯でアルゼンチン代表FWメッシがチームを優勝に導いたように、攻撃で違いを作り出す選手の存在は、チーム浮沈の鍵となる。今季のG大阪は、ともにスペイン人のポヤトス監督、バルセロナの育成組織で久保を指導したマルセルヘッドコーチが就任。フィジカルをないがしろにするわけではないが、技術を重んじるスペインの“風”が、中村を飛躍させる追い風となるのではないか。そんな妄想を膨らませながら、若きテクニシャンの新シーズンに期待したい。(G大阪担当・金川 誉)
◆中村 仁郎(なかむら・じろう)2003年8月22日、大阪府生まれ。19歳。G大阪ユース所属の高校1年生時、19年7月21日のC大阪U―23戦でJ3リーグに出場。15歳10か月29日でのJデビューは当時、久保建英、森本貴幸につぐJリーグ史上3番目の若さ。20年にはG大阪で宇佐美、堂安以来となる高校2年生でJ1デビュー。その後は負傷に苦しみ、22年にトップチーム昇格。165センチ、59キロ。左利き。
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