「半自動オフサイド判定」は骨格・関節のトラッキングを活用 開発元ホークアイに詳しく聞いた…スポーツテックサッカー編

半自動オフサイド判定のCG映像(Sony -GlobalのYouTubeチャンネルより)
半自動オフサイド判定のCG映像(Sony -GlobalのYouTubeチャンネルより)

 スポーツにとって、最新テクノロジーは正しい判定や中継で欠くことができない存在だ。最近話題になったサッカーの「半自動オフサイド判定」システムは、ソニーの子会社「ホークアイイノベーションズ」(以下、ホークアイ)も開発し運用している。

 「ホークアイ」の提供する各種サービスは、テニスの「チャレンジ」などでも採用された実績があるほか、MLBでは「StatCast」の名称で開示されている選手のプレーデータの解析の元となるデータの提供をしている。また同社では世界各国のサッカーリーグ向けに「VAR」の運用も行っており、“三笘の1ミリアシスト”などでサッカーファンにはすっかりおなじみになった。

 今回はVARなどのビデオリプレーや、サッカーの「半自動オフサイド」システム、野球のトラッキングに焦点を当て、スポーツを支える最新技術について、システム概要編、サッカー編、野球編の3つをソニー社員で「ホークアイ」アジアパシフィック部門VPの山本太郎氏に話を聞いた。(取材 構成・田中孝憲=@sph_tnk)

 ◆サッカー編

ホークアイがセリエAと共同で設置したVARリプレーセンターの様子(ソニー提供)
ホークアイがセリエAと共同で設置したVARリプレーセンターの様子(ソニー提供)

 サッカーではVARやゴールラインテクノロジーがすでにファンに知られ、公平な判定に役立てられている。最近では「半自動オフサイド判定」システムが大きな話題となった。これらも「ホークアイ」がサービスの開発を行った。

 ―VARが一番有名ですね

 「ビデオリプレーのサービスです。『シンクロナイズド・マルチアングル・リプレーテクノロジー』を略してスマート(SMART)と呼んでいますが、中継放送用のテレビカメラの映像を弊社のサーバーに入れて、同期させた映像をいろんな角度から審判に見ていただいて判定の支援をする、ということをしています。

 ―カメラはソニーが用意したものではないんですね

 「国内のリーグでは、通常12台分のテレビカメラの映像をいただいて、タイムスタンプで同期させた状態にして、審判が見られない角度の映像からでもプレーを確認できるようにしています」

 ―ディスプレーに囲まれた部屋はすっかりおなじみですね

 「国内のリーグの場合、特別な試合等でテレビカメラが12台以上の編成になる場合

(リーグ側に)判定に使うカメラ12台を選んで頂いています。大きな国際大会では20台を超える台数になり、FIFAのルール上、12台以上になる場合は(VARを)1人増やしなさいという規定になっています。12台以上(のカメラが)あると、1人では追えないので、12台区切りで1人増えます。そうした大会の決勝では50台以上が使われている場合もあり、審判団の部屋の人数も非常に多くなります」

 ―トラッキングはどんな形で使われていますか?

 「ボールだけをトラッキングするゴールラインテクノロジーの場合、1つのゴールに対して7台のカメラを向けています。ボールの位置を正確に追って、ゴールのラインを越えていたら審判がつけている腕時計の端末を振動させたり、インカムでゴールをお伝えする、ということをやっています」

インカムを付けて試合に臨む線審
インカムを付けて試合に臨む線審

 ―「半自動オフサイド判定」はどんな仕組みなのですか?

 「最新のトラッキング技術である『スケルトラック』と、映像化技術である『ホークビジョン』という2つの技術を活用しています。サッカーの場合、12台のトラッキング専用のカメラで、選手の動きや骨格、関節情報を追っています。現在では29の関節ポイントを追って、選手の位置情報を出しており、選手の肩の位置や、足首、膝の位置もトラッキングして映像化することができるため、ボールを蹴り出した瞬間に最前線の選手の位置が、オフサイドかどうかをの判定も行えます」

 ―骨格を撮っているのですか?

 「一連の流れをトラッキング専用のカメラで撮った映像から骨格のデータだけ推定して抽出します。それを映像化エンジンにかけると、バーチャルの映像でプレーが再現できます。そうすると、いろんな角度にも視点を動かせるので、プレーを審判目線で見たり、真横から見たり、ぐるっと回したりしていろんな角度から見ることができます。今ではデータを抽出してから映像化までを相当なスピードで行えるほど、技術的に進歩しています」

 ―どのように人やボールを認識しているのですか?

 「選手やボールの動き、選手の骨格の情報、背番号をトラッキング用のカメラでとらえて自動認識しています。そのため、試合中、ずっとオフサイドラインを出すこともできます。ボールが出た瞬間に選手、全選手がどこにいるのかという状況も分かります。また、CG化することもできるので、審判判定に加えて、エンタメとかコーチング、戦術分析などでも使うことができると思います」

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 ―背番号トラッキングのずれが起きた場合は手で補正するのですか

 「そうです。タグ付けはマニュアルでやる場合もありますし、野球やサッカーであればかなりの精度で追えます」

 ―最新技術はファンの間でも驚きがあります

 「基本的にオフサイドの判定はVARの中で決めてしまっていいので、主審へのオンフィールドレビューはせず、主審はVARの判断を聞いて『じゃあオフサイドなので試合を続けましょう』となります。そのあと我々はオフサイドのシーンを再現するCGを作るという作業もありますが、それもほぼリアルタイムでできています。ただ、サッカーは流れのあるスポーツなので、CGをいつお見せするのか、というのが難しいところではあります」

 ―全自動ではないのですね

 「ボールを蹴った瞬間の最後方のディフェンス選手と最前線のオフェンス選手の位置を出して、オフサイドかどうかを審判に伝えます。ただ、オフサイドポジションにいるけれど、プレーに絡んでいない選手もいます。それは目視でVARが見た上で伝えています。そこの部分は自動になっていないので、『半自動』です。そして、オフサイドの時のCGはしかるべきタイミングでファンの方に見ていただく、ということをやっています」

 ―他にはどんな活用ができそうですか?

 「スケルトラックでは、選手の走った速度やシュートの速度などのデータも出すことができます。何メートルドリブルしたとか、シュートの距離、どれくらいの高さでヘディングしたのかなども情報として出せます。そうしたデータを通常の映像に載せることもできますが、実際にどのような見せ方をしていくかはこれからの段階です」

 「バスケットボールでは、ゴールに向けて放たれたボールが上昇中にブロックすることは問題ありませんが、ボールが最高到達点から下降し始めた後、ボール全体がリングよりも高い位置にある間にプレイヤーが触れるとバイオレーションとなる『ゴールテンディング』というルールがあります。映像でボールが上がっている時には青い枠で囲み、下がった瞬間に赤い枠にしてプレイヤーがボールに触った瞬間を可視化させることもできます。これもボールと選手のトラッキングを使った、新しい判定の仕方の一つです」

 ―いろんな新しい見方ができそうですね

 「また、ある選手をずっと追ったCGを作ることもできるので、どうやってディフェンスを引き離したのかなどの選手目線のCG動画を作ることもできます」

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