「節約」「貯金」「無駄遣い」で生き方描く…「三千円の使いかた」原田ひ香著

スポーツ報知
自分以外の人が書いた小説は「一番楽しい娯楽であり、友人です」という原田ひ香さん(カメラ・喜多 剛士)

 お金の使い方を通して家族それぞれの生き方を描いた原田ひ香さんの小説「三千円の使いかた」(中央公論新社、770円)が「第15回 オリコン年間“本”ランキング 2022」文庫部門で1位に輝いた。80万部に迫るベストセラーとなり、来年1月からドラマ化も決まった本作への思いを聞いた。(瀬戸 花音)

 節約セミナー、年利2%、費用対効果…お金をためるための言葉が並ぶページをふむふむと読んでいると、リアルな家族の物語にいざなわれている。知識と物語が混合する不思議なテイストにも感じるが、原田さんは「実用書のようにしたいと思ったことは全くない」と言い切る。「お金の話って家計のことだけではなく、いろいろな制度や裏技とかもあって、そのものが楽しいと思います。それを小説にしたら面白くなるのではないかと考えたのであって、資産運用をしてもらいたくて小説を書いたわけではありません」

 それでも、本書を読んで「お金の勉強に興味を持った」という感想をもらうことは「うれしい」という。「ネットの感想などを見ると、『三千円の使いかた』を読んで、少し、お金のことも勉強しようかな、考えようかな、家計簿をつけようかな、と言っている方がいるのは、ちょっと驚きましたがうれしいことです」

 本作の誕生のきっかけは、小説家デビューしたばかりの30代後半のころに美容院で出会った「主婦雑誌」「節約雑誌」だった。「そこに出ている、若くて少しお給料は少ないけど、しっかり節約をして貯金をして、幸せそうに暮らしている美しい主婦の方たちにひかれ、そういう女性を書いてみたいと思ったのが始まり。主婦が小説に出てくると、不倫をしたり、殺人をしたり、夫に強い不満を抱いていたり、というものが多いのですが、そうではなく、幸福で普通の人が実際にはほとんどだ、ということも書きたかったのです。それには『節約』や『貯金』などを軸にしたらどうかと思いました」

 「節約」や「貯金」という軸が浮かんだ理由のひとつには、原田さん自身が節約家であることもある。「節約は私のライフワークで趣味でもあります」というほど。「毎月、さまざまな予算を決めて使っていますが、特に食費は1週間分の予算を決めて、現金で小分けし、袋に入れて管理しています。1か月が終わった時、残った小銭がジャラジャラしているのをまとめて『いくら余ったかな?』と精算するのが、一番の楽しみです。そのお金だけは私の自由に、節約や貯蓄を考えずに使えるお金にしています」

 そんな原田さんに今まで最も無駄だったと感じた「三千円の使いかた」を聞いた。「無駄と言っていいのか分からないのですが、クレジットカードの切り替えの時に、そのカードに付いていたポイントを忘れて処分してしまったのです。それが三千円くらいだと思うのですが、いまだにそれを思い出すと、頭がカッと熱くなるほど悔しくなります」

 逆に最近の買い物で良かったものは「ちょっといい、ウォーキング用の靴下」だという。「自然に使って破れたら、何度でも新品に交換してくれるらしいので、一生、靴下に困らないらしいのです。毎日はきながら、破れるのを楽しみにしています」

 原田さんはお金を「労働と労働を交換する手段の一つ」と表現する。「私が原稿を書いて、それを工務店さんにお渡ししても家は建ちません。それどころか、頭のおかしい女だと困らせるだけでしょう。でも、原稿を出版社に渡して本にしてもらえば、いくばくかのお金がもらえ、それをお世話になった人に払うことができます。私は、家は建てられません。それをできる能力を持った方に建ててもらうため、感謝もこめてお金を払えるのは本当に良い仕組みだと思います」

 「三千円の使いかた」は、今、ひとつのブームをつくっていると言っても過言ではない。来月にはフジテレビ系(制作は東海テレビ)で葵わかなが主演し、ドラマ化される。「葵わかなさんの朝ドラ『わろてんか』をずっと見ていました。あの方が、自分が書いたものに関係するドラマに出てくださるのは夢のようです。確か、あの朝ドラをやっていた頃、『三千円の使いかた』の最初の連載を書いていました。あの頃の自分に教えてあげたいですね。今からオンエアが楽しみです」

 ◆原田 ひ香(はらだ・ひか)1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。著書に「そのマンション、終の住処でいいですか?」「彼女の家計簿」「ラジオ・ガガガ」など。

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