アルゼンチン対フランスの決勝ではスーパースター2人が競演し、超人的なプレーの応酬で9万人近い観衆を、さらには世界中のファンを魅了した。エムバペが56年ぶり史上2人目となるハットトリックで大会得点王(合計8得点)に輝いたが、35歳のメッシもチームの3得点すべてに絡む活躍。5度目の出場で自身初の優勝を達成し、大会MVPに選ばれた。アルゼンチンにとって36年ぶり3度目の戴冠で、選手たちは喜びを爆発させた。
カタールでの開催は様々な論議を呼んだが、競技面では充実していた。1次リーグでサウジアラビアがアルゼンチンを倒し、日本がドイツとスペインに逆転勝ちを演じて世界を驚かせた。日本は1次Lを首位で突破し、史上初の8強入りを目指して前大会の準優勝国のクロアチアと互角に戦ったが、延長、PK戦に末に力尽きた。
モロッコは、強豪ベルギーを下して1次Lを首位で突破すると、スペイン、ポルトガルを連破してアフリカ勢初の4強入り。準決勝ではフランスに敗れたが、試合内容は2―0というスコア以上に拮抗していた。
優勝候補筆頭と目されていたブラジルは、クロアチアと準々決勝で対戦。0―0で迎えた延長前半にネイマールの見事なゴールで先制したが、延長後半に守備の乱れから失点。日本と同様、PK戦で敗れて涙を飲んだ。
アルゼンチンは、初戦でまさかの敗北を味わったが、エースのメッシが懸命にチームを盛り立てた。アルバレス、フェルナンデスら若手が躍動。準々決勝で難敵オランダを延長、PK戦の末に下すと、準決勝ではクロアチアに快勝した。
決勝は、W杯史上に残る名勝負。アルゼンチンが常に先行したが、フランスがしぶとく追いついてPK戦までもつれ込んだ。アルゼンチンが4人全員が決め、GKの奮闘もあって、南米勢としては02年のブラジル以来、5大会ぶりに世界の頂点に立った。
フランスは史上3度目の連覇まであと一歩だったが、前半、守備が乱れて失点を重ねたのが痛かった。
欧州のシーズン真っただ中に開催されたため、準備期間が短く、開催国が1次Lで史上初めて3連敗を喫して大会から姿を消すなど異例の大会だった。終盤の盛り上がりで、何とか格好がついた。審判の判定に関しては、VARなどのテクノロジーを活用したことで誤審が減少。大きな禍根を残すような判定がほとんどなかったことは評価していいだろう。
◆マルチン・フェルナンデス 1981年、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。41歳。2002年にスポーツ記者のキャリアを始め、現在はブラジルの大手メディアグループ「グロボ」所属。スポーツ電子版「グロボ・エスポルチ」と日刊紙「オ・グロボ」で健筆を振るう。「ザ・ベスト・FIFAフットボールアウォーズ」選考委員。10、14、18、22年W杯現地取材。