柔道男子73キロ級で五輪2連覇の大野将平(30)=旭化成=が第一線を退く意向を持っていることが14日、分かった。関係者によると、指導者の道に進むことも視野に入れ、日本オリンピック委員会(JOC)が実施する来年度のスポーツ指導者海外研修事業への申請準備を行い、英国留学を希望しているという。全日本柔道連盟への強化指定選手の辞退届は提出していない。
大野は柔道私塾の講道学舎で鍛え、豪快な内股や大外刈りを武器に天理大4年時の13年に世界選手権を初めて制した。15、19年にも頂点に立ち、五輪は16年リオ、21年東京大会で金メダル。海外勢には14年8月を最後に個人戦無敗だった。
昨夏の五輪後、実戦出場は4月に体重無差別で争われた全日本選手権のみ。自身の階級には出場していなかった。6月の国際大会も「コンディション不良のため」辞退した。ただ、今月上旬のグランドスラム東京大会の代表に選ばれたことを受け、「求められている証拠。それに応えたい」と決意。復帰戦と定めて調整していたが、コンディションが整わず、大会直前に「日本代表として戦う心と体を大会までに作り上げる事ができなかった」と無念の欠場を決断した。今後については「自分としっかり向き合い決めたい」としていた。
絶対王者としての強さを見せるだけでなく、「正しく組んで正しく投げる」柔道を追求し、畳の上で体現してきた。東京五輪後は24年パリ五輪を目指すかどうかは慎重な姿勢を貫き、関係者によると、気持ちと体が思うように一致せず、苦悩の中で稽古に取り組んでいたという。世界から尊敬を集めた柔道家が、日本男子では史上4人目の五輪2連覇の偉業を区切りに、30歳で競技人生の節目を迎えることになりそうだ。
◆大野 将平(おおの・しょうへい)1992年2月3日、山口県生まれ。30歳。旭化成所属。東京・弦巻中、世田谷学園高は柔道私塾「講道学舎」で鍛え、天理大へ。2011年に世界ジュニア制覇。73キロ級で13、15、19年世界選手権優勝、16年リオ五輪、21年東京五輪金。右組み。得意技は大外刈り、内股。170センチ。