【ドーハ(11日)=岡島智哉】カタールW杯は準々決勝までを消化し、残るは3位決定戦を含めて4試合となった。
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日本がPK戦での敗退となったことで、PK戦の戦い方が大きな議論となった。先攻か後攻か。指名制か挙手制か。どちらのサポーターサイドのゴールで行うか。
今大会のPK戦はここまで4試合。クロアチア2勝、アルゼンチン1勝、モロッコ1勝。日本、ブラジル、オランダ、スペインがそれぞれ1敗ずつ。クロアチアは前回大会から合わせて4戦全勝だ。
勝者に共通点を見つけるのは難しい。クロアチアは先攻でも後攻でも勝った。日本敗退後、ネット上には「挙手制否定派」が多く見られたが、翌日、指名制採用国のスペインが全員失敗し、挙手制採用国のモロッコが勝利。一夜にしてどこかへいってしまった。
しかし、1つだけ法則がある。「最初に外した国が負ける」というものだ。先攻や後攻は関係なく、というのがポイント。先攻だろうが後攻だろうが、とにかく先に失敗した国が敗退している。4分の4。今大会の4度のPK戦では、1度も“逆転”が起きていない。
直近のW杯でも同様の傾向がみられた。10年南ア大会で2回、14年ロシア大会と18年ロシア大会でそれぞれ4回ずつ、過去3大会で合計10回のPK戦が行われた。そのうち9試合で、最初に外した国が負けた。
W杯だけでは母数が少なく、PK戦そのものの傾向として結論づけることはやや強引だ。しかし少なくともW杯に限れば、先に失敗したチームは14チーム中、13チームが散った。14分の13。ほとんどの試合で、相手の失敗で精神的に優位に立ったチームがそのまま勝ち上がった。
そりゃそうだ、と思わないでもないが、そうなると「1番手と5番手に優れたキッカーを」というPK戦の定説は揺らぐ。「いいキッカーから順番に出していく」という、プロ野球の延長戦の継投スタイルが正しいのではないか。
そうすれば、ブラジルが5番手で予定されていたことを明かしたネイマールを“温存”する形で敗れたようなことはなくなる。
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少なくとも直近4大会において「先に外したチーム」は14チーム中13チームが敗退し、「先に外させたチーム」は14チーム中13チームが勝ち上がった。
「PK戦は運なのか」という議論が巻き起こっているが「しっかりとした準備・研究を行った上で、あとは運任せ」というのが正解に1番近いだろう。
運を引き寄せるためにできることは、徳を積むことぐらいか。だが準備・研究の精度を上げる余地は、まだまだ残されているのではないだろうか。(記者コラム・岡島 智哉)