◆カタールW杯▽準々決勝 イングランド1―2フランス(10日・アルバイト競技場)
格下相手の簡単な試合に勝ち、今度こそ優勝かとファンを期待させる。そして、強豪にあっさりと負ける。イングランドの悪癖だ。
セネガルに3―0で快勝しても、フランスに力負け。自国開催だった1966年のW杯以降、56年間の無冠は、サッカー発祥国でプレミアリーグを持ち、熱狂的なファンで国中が埋まる強豪国にはあまりに長すぎる。
サウスゲート監督は14年大会で最下位で1次リーグ敗退となったチームを復活させた。18年大会は準決勝に進み、21年の欧州選手権では準優勝。ところが今回の準々決勝敗退でまた一つ逆戻りした形になった。
イングランドは、そのフィジカルの強さとスピードで弱いチームを圧倒することはできる。しかしフランスのようなエリートチームに対しては、2点目をアシストしたグリーズマンが見せつけたような創造性とクオリティに欠ける。
この試合でも、イングランドの得点パターンはケインにロングボールを送るか、ボックス内の反則を誘ってPKを奪うしかなかった。思惑通り2回PKを与えられ、1度は決めたが、2度目のシュートは大きくバーを越えて、そのボールははるか遠くの隣国バーレーンまで達したという噂が流れた。
悪い冗談はさておき、この試合でサウスゲート監督には強豪を打ち負かす勇気と戦術が足りないことが明確になった。
近年の悪癖を打ち破ってイングランドが優勝するためには、力任せのサッカーに創造性と真の勝利のメンタリティを注入できる監督が不可欠である。残念ながら、サウスゲート監督には限界が見えた。彼の役目はここで終わったとみている。
◆マーク・オグディン 1974年10月10日、英国マンチェスター近郊のバリー生まれ。48歳。通信社勤務を経て、2009年から英高級紙「デイリー・テレグラフ」のマンチェスターU(マンU)担当。マンUのファーガソン監督勇退スクープで、13年英スポーツライター・オブ・ザ・イヤー受賞。イングランド代表担当として10、14、18、22年W杯現地取材。