囲碁の中学生棋士、仲邑菫三段(13)が8日、東京都千代田区の日本棋院で行われた第26期女流棋聖戦本戦トーナメント決勝で藤沢里菜女流本因坊に241手までで黒番中押し勝ちし、上野愛咲美(あさみ)女流棋聖への挑戦を決めた。
クリスマスツリーの前、13歳の少女はサンタクロースの来訪ではなく、自身の完勝に喜びの笑顔を見せた。
今年一年を表す漢字は「夢」。「タイトル戦は夢の舞台なので、そこに行けたのはうれしいです」という声はきらめいていた。
対局については「序盤は互角だったと思うのですが、中盤で形勢を多分損ねて、少し苦しい碁になっていたと思うのですけど…中盤あたりの読みあいで少し得をして、いい勝負になったかなと思いました」と振り返った。
仲邑の番勝負は今年4月に藤沢と対決した女流名人戦三番勝負(藤沢が2連勝で防衛)に続き、2度目。タイトル挑戦は7月に牛(にゅう)栄子四段と対決した扇興杯女流最強戦決勝も合わせて3度目となる。
日本棋院の小林覚理事長は「男性棋士の中に入ってもトップ棋士になる要素を持っている。あとは順調に育ってくれれば、今までにないすごい景色が見られると思う」と評し、中継解説を務めた高尾紳路九段は「女流名人挑戦の時よりもはるかに強くなっている」と語った。
藤沢を破り挑戦を決め、上野を破り最年少記録でタイトル獲得となれば、「三強時代となり、歴史の転換点になるかもしれない」と高尾はいうが、仲邑は「自覚はないです。上野先生と藤沢先生と実力差はだいぶあると思うので、今回挑戦できたことは奇跡かなと思います。自分の力を出し切って悔いのないようにしたい。タイトルとかは意識せず、内容のよい碁を打てたら」と謙虚な言葉を並べる。
三連覇がかかる上野との三番勝負は1月19日に神奈川県平塚市で開幕。「ハンマーパンチ」とも称される上野の豪腕(ごうわん)の対策は「別の対抗手段を用意出来るほど実力はないので、うまくかわせたらいいなと思います(笑い)」。
「クリスマスプレゼントはもう決めましたか?」。尋ねれば、「マフラーが欲しいなと。白いのがいいです」。まだあどけない笑顔は少女の強さを際立たせる。(瀬戸 花音)