2022年に初回放送から55周年を迎えた人気特撮ドラマ「ウルトラセブン」が、盛り上がりを見せています。昨年10月には「第35回東京国際映画祭」で特別上映され、雑誌などでも特集が組まれるなど、今年秋まで様々な関連イベントが企画されています。
1966年7月、「ウルトラマン」からスタートした「ウルトラマンシリーズ」は、「―セブン」(67年10月~68年9月)と続き、21世紀に入っても、新たなヒーローが、宇宙の平和を守ってくれています。
スポーツ報知では円谷プロの協力のもと、45周年となった2011年に初ウルトラマンの誕生秘話を追った連載「光の国を創った人たち」を全20回、掲載しました。続いて12年には「ウルトラセブンを創った人たち」を20回にわたり連載。様々な関係者の証言を元に、永遠のヒーローの実像に迫りましたが、今回、この2つの連載をWEBのみ加筆・修正して再掲載します。それでは、―セブン誕生秘話をお楽しみください。(毎日更新)
モロボシ・ダンとアンヌの淡い恋模様をシナリオに織り込むことが企画段階で確認されていた、というのは、今回の連載でも書いてきた。ひし美ゆり子(当時・菱見百合子)はアンヌを演じる上で、どう意識していたのだろうか。
「自分としては普通に演じていただけ。ただ、満田●(かずほ)監督がメガホンを執る時は、撮影所に他の人よりも1時間くらい早く呼ばれて、いろいろ指導を受けましたね。『ここはこういう気持ちを込めてやって』『ここは母親が子供を諭すように話してみて』とか…ファンの方が出来上がった作品を見て、アンヌのダンに対する恋愛感情みたいなものを感じているのなら、そういうふうに撮ってくれた監督、スタッフの方のおかげかな」
そんなひし美に、満田が「大変、重要な役になる」と前もって説明していた回があった。第49話「史上最大の侵略 後編」(脚本・金城哲夫)―そう、約11か月間にわたって放送されてきた「ウルトラセブン」の最終回だ。
地球侵略を狙う宇宙人との戦いが続き、肉体が限界を迎えたダン。ゴース星人と、その先兵たる怪獣・改造パンドンとの最後の戦いに臨む直前、アンヌに自らの正体を明かす―。
アンヌ、僕は…僕はね、人間じゃないんだよ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ
シューマンのピアノ協奏曲イ短調が流れ、場面が暗転。アンヌとダンがきらめく光の中、シルエットで浮かび上がる…まさに、クライマックスのシーンだ。
「セブンが自分の正体を明かすのは、キリヤマ隊長でもウルトラ警備隊のほかの隊員でもない。アンヌなんです。『ノンマルトの使者』(第42話)のあたりで、僕が最終回のメガホンを執ることが分かったから、アンヌには話しておいたんです。『重要な役になるよ』と」(満田)。
満田が意識して描いてきた淡い恋模様の帰結があのシーンだった。そして、ダンは次のように言い残して、アンヌの前を去っていく。
西の空に明けの明星が輝く頃、一つの光が宇宙へ飛んで行く。それが僕なんだよ…さよなら、アンヌ!=文中敬称略
●=のぎへんに斉
〇…ひし美が思い出に残っているエピソードとして挙げたのは、第22話「人間牧場」だ。ドラマ冒頭、友人の誕生パーティーに出席したアンヌ。この時に着た白いミニのワンピースがかわいく、忘れられないそうだ。「スパンコールみたいにキラキラ光ってね…すごくかわいかった。この時のスチール写真が、本当にきれいに撮れているんです。この回は本編(ドラマ部分)も特撮班が撮った作品ですが、大好きですね」
〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では「ウルトラセブン」放送55周年を記念し、全エピソードからセレクションした1話を毎月無料配信している。1月は第14話「ウルトラ警備隊西へ 前編」。今後、毎月更新される。「ウルトラセブン」は有料プランでいつでも見放題となっている。