ひし美「アンヌ」運命的誕生…ウルトラセブンを創った人たち〈17〉

スポーツ報知
友里アンヌ隊員のフィギュアを手に笑顔をみせる女優・ひし美ゆり子(2012年6月8日撮影)

 2022年に初回放送から55周年を迎えた人気特撮ドラマ「ウルトラセブン」が、盛り上がりを見せています。昨年10月には「第35回東京国際映画祭」で特別上映され、雑誌などでも特集が組まれるなど、今年秋まで様々な関連イベントが企画されています。

 1966年7月、「ウルトラマン」からスタートした「ウルトラマンシリーズ」は、「―セブン」(67年10月~68年9月)と続き、21世紀に入っても、新たなヒーローが、宇宙の平和を守ってくれています。

 スポーツ報知では円谷プロの協力のもと、45周年となった2011年に初ウルトラマンの誕生秘話を追った連載「光の国を創った人たち」を全20回、掲載しました。続いて12年には「ウルトラセブンを創った人たち」を20回にわたり連載。様々な関係者の証言を元に、永遠のヒーローの実像に迫りましたが、今回、この2つの連載をWEBのみ加筆・修正して再掲載します。それでは、―セブン誕生秘話をお楽しみください。(毎日更新)

 友里アンヌを演じた菱見百合子(現・ひし美ゆり子)が当初、アンヌ役に決まっていた東宝の女優・豊浦美子の代役だった、というのは有名な話だ。豊浦は「ウルトラマン」から続いての出演となったフルハシ隊員役の石井伊吉(現・毒蝮三太夫)、アマギ隊員役・古谷敏とともに、早い段階で起用が固まっていた。が、映画出演が急きょ決まり、「セブン」を降板することになったのだ。

 代わりに抜てきされたのが、豊浦の東宝の1年後輩・ひし美だった。

 「会社から突然、『明日、円谷プロに行ってほしい』と電話があり、カメラテストとかオーディションがあるんだな、と思って行ったんです。この前、満田(●=かずほ)監督に会った時、『もうその段階でアンヌ役に決まっていた』と聞いてビックリ。つい最近まであれはオーディションだった、と思っていたんですから」

 この時、円谷プロの関係者から「こういう作品の続編を撮る」と「ウルトラマン」の映像を見せられた。初めて見る特撮ヒーローものだった。

 「(ウルトラマンが)放送されていた日曜日の夜は、父がNHKのニュースを見ていたから…印象? ボーッと見ていたので…でも、『(科特隊の)ああいうオレンジ色の隊員服を着たいなあ』とは思いました。私、顔が地味だったから、いつも『派手な色の服を着ないと』と思っていたんです。この時だって、オレンジ色の服で円谷プロに行ったんですよ」

 その服で円谷プロの庭にあった花畑に立たされ、スチール用の写真撮影を行っていると、重低音の排気音が響いてきた。ウルトラ警備隊専用車「ポインター号」がゆっくりと入ってきたのだ。

 「助手席から出てきたのがダンだった。『あれ、森次君。どうしたの?』って。彼とは『天下の青年』というドラマで共演していたんです。私はこの作品にレギュラー出演していたんですが、2クール(6か月)放送する予定が1クールで終わっちゃった。仕事が空いちゃったんですよ」

 当初の予定通り「天下の青年」が半年間の放送だったら、ひし美がアンヌになることはなかったのだ。=文中敬称略

●=のぎへんに斉

 ◆ひし美 ゆり子(ひしみ・ゆりこ) 1947年6月10日、東京・中野区生まれ。東宝俳優養成所を経て、66年にデビュー。同期には牧れい、若原啓子らがいる。「ウルトラセブン」出演後も数多くのテレビドラマ、映画に出演。2008年の映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」では、パラレルワールド(異世界)の設定だったが、モロボシ・ダンと夫婦になっているアンヌを演じた。

 〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では「ウルトラセブン」放送55周年を記念し、全エピソードからセレクションした1話を毎月無料配信している。1月は第14話「ウルトラ警備隊西へ 前編」。今後、毎月更新される。「ウルトラセブン」は有料プランでいつでも見放題となっている。

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