黒沢年雄もダン候補だった…ウルトラセブンを創った人たち〈15〉

スポーツ報知
森次晃嗣(2012年6月1日撮影)

 2022年に初回放送から55周年を迎えた人気特撮ドラマ「ウルトラセブン」が、盛り上がりを見せています。昨年10月には「第35回東京国際映画祭」で特別上映され、雑誌などでも特集が組まれるなど、今年秋まで様々な関連イベントが企画されています。

 1966年7月、「ウルトラマン」からスタートした「ウルトラマンシリーズ」は、「―セブン」(67年10月~68年9月)と続き、21世紀に入っても、新たなヒーローが、宇宙の平和を守ってくれています。

 スポーツ報知では円谷プロの協力のもと、45周年となった2011年に初ウルトラマンの誕生秘話を追った連載「光の国を創った人たち」を全20回、掲載しました。続いて12年には「ウルトラセブンを創った人たち」を20回にわたり連載。様々な関係者の証言を元に、永遠のヒーローの実像に迫りましたが、今回、この2つの連載をWEBのみ加筆・修正して再掲載します。それでは、―セブン誕生秘話をお楽しみください。(毎日更新)

 第1話「姿なき挑戦者」で、モロボシ・ダン(森次浩司=現・晃嗣)が初めてウルトラ警備隊のフルハシ(石井伊吉=現・毒蝮三太夫)、ソガ(阿知波信介)の前に登場したシーンを覚えているだろうか? 人間蒸発事件が続発。ポインター号で調査に向かうフルハシ、ソガにダンが危険を知らせるのだ。

 フルハシ 君は一体、何者だ?

 ダン ご覧の通りの風来坊です

 ソガ 名前は?

 ダン 名前? そう…モロボシ・ダンとでもしておきましょう

 黄色いブルゾンにナップザック…まさに風来坊然としたいで立ちのダンに、森次は自らの姿を重ね合わせていたという。

 「俳優を目指して北海道から出てきた自分に、『風来坊』というセリフがピッタリと合うように感じた。ダンを演じたのは24歳の時。子供向けの番組だとか、そんな思いはなかった。主役だし、1年間、みっちりとやれば、次の仕事につながる…そう思っていたね」

 上京後、アルバイトなどで生計を立てていた森次は、1965年、TBS系ドラマ「青春をぶっつけろ」で俳優デビューした。その後、原田芳雄主演のフジテレビ系ドラマ「天下の青年」(67年)に出演したが、この撮影現場を円谷プロの関係者が頻繁に訪れていた。それが、同プロ演技課に所属する新野悟だった。

 新野は新たなウルトラマンシリーズの主役を探していた。当初の企画名「ウルトラアイ」にふさわしく、目がきれいな青年で、かつ、「諸星弾」という少年の出世物語がドラマの柱に設定されていたため、初々しさのある俳優。こうして、抜てきされたのが森次だった。

 「円谷プロはもともと東宝の流れだから、最初は『東宝の俳優で』ということだったみたい。ウルトラマンの黒部進さんもそうでしょ? で、黒沢年男(現・年雄)あたりが候補だったらしいけど、ダンの設定とはイメージが違い過ぎる…ということになった。新野さんがよく撮影現場に来ているのは知っていたけど『誰を見に来ているのかな』くらいな感じだったね」=文中敬称略

 〇…「姿なき挑戦者」では、劇中に「ウルトラセブン」の名前が出てこない。第2話「緑の恐怖」のワイアール星人との戦闘シーンで、アンヌが「ウルトラセブン頑張って!」と言うのが最初だ。第1話にはセブンがダンとなり、ウルトラ警備隊の一員として地球を守る…という決意表明のシーンがあったが、「尺(時間)の都合でカットになった」と満田●(かずほ)監督。様々な経過の末、ヒーロー名が放送第1話では出てこず、第2話が初出となるのは、“お約束”を飛びこえた斬新な演出だったのではないだろうか。

●=のぎへんに斉

 〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では「ウルトラセブン」放送55周年を記念し、全エピソードからセレクションした1話を毎月無料配信している。1月は第14話「ウルトラ警備隊西へ 前編」。今後、毎月更新される。「ウルトラセブン」は有料プランでいつでも見放題となっている。

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