高齢者とペット問題…近隣環境に影響出る深刻事例も “四位一体”の尼崎モデルが全国に広がるか

「高齢者とペット問題を考える」のシンポジウムに参加した女優の杉本彩
「高齢者とペット問題を考える」のシンポジウムに参加した女優の杉本彩

 「高齢者とペット問題を考える」シンポジウムと、「老犬たちの涙」の写真展が4日、兵庫・尼崎市内で開かれた。公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」理事長として動物愛護活動を続ける女優の杉本彩も参加し、高齢化社会で増える、この問題を話し合った。

■関心の高さ…予定の2倍以上の参加

 当初、会場には聴衆100人を予定していたが、申し込みが多く、コロナ対策をしながらスペースを拡張し、200人以上が参加。関心の高さを表していた。かつて猫を飼っていた記者は、約2時間30分に及ぶシンポジウムで初めて実態を知った。少子高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増加。その人が死亡、入院、介護施設へ入所すると、ペットを飼っていればどうするのか―。当事者以外には見えづらい問題だ。

 写真集「老犬たちの涙」を出版し、パネルディスカッションに参加したフォトエッセイストの児玉小枝さんは、殺処分を行う行政施設で聞いた話を明かした。「高齢者の方の家族が『マンションで飼えないから』『子どもが動物アレルギーだから』『他にペットがいるから』などの理由で引き取ってくれないと…」。飼い主、ペットともに高齢で、まさに“老老介護”も多い。2020年度に行政施設で殺処分された犬が4241匹、猫が2万6418匹だった環境省のデータを示した。

 また、約30年にわたって動物愛護の活動を続ける杉本は、ある高齢者が孤独死した後、多頭飼育崩壊になっていたペットを警察、行政が放置。一部は死んで腐敗し、鳴き声や臭いなど、近隣へ影響が出た他地域での例を説明した。

■市とNPO法人がクラファン

 尼崎市では「高齢者とペットの安心プロジェクト」としてNPO法人C.O.Nと連携し、ふるさと納税によるクラウドファンディングを12月末まで受け付けている。同市内に12か所ある「地域包括支援センター」の職員は、高齢者がペットの散歩やエサやりの世話ができなくなり、その間に繁殖して多頭になったケースを紹介し、他には介護施設に入った飼い主のためにNPO法人に協力要請したという。

 訪問介護ヘルパーからは、高齢者女性が飼っていた病気の猫を動物介護ボランティアを通じて病院に入れたが、最終的には女性と猫が同じ日に亡くなった出来事が明かされた。また、ある町内会では高齢者向けヘルプキットに、自身に何かあった際のペットの引き取り先を伝える用紙を入れている。

 尼崎では行政だけでなく、動物愛護団体、地域のケアマネジャー、家族・親戚が連携を取る“四位一体”で、高齢者の飼い主をサポートしている。これは貴重な構図だろう。杉本は「これから全国に伝えて広まるように力を尽くしたい」とうなずいていた。

■犬猫の平均寿命15歳前後

 ペットフード協会が21年12月に発表した全国犬猫飼育実態調査によると、犬は710万匹で猫は894万匹。新型コロナで癒やしを求める人が増え、1年以内の新規飼育者はコロナ前の19年と比べて増加している。また調査では飼育されている猫の平均寿命は15・66歳、犬は14・65歳と紹介。定年退職後に新たなペットを迎え入れ、老後の生活が潤っている人も多いだろうが、目を背けられない現実もあった。

社会

個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請 報知新聞150周年