◆柔道 グランドスラム東京大会 最終日(4日・東京体育館)
男女8階級が行われ、女子52キロ級で東京五輪金メダルの阿部詩(22)=日体大=が優勝した。決勝で志々目愛(28)=了徳寺大職=に優勢勝ちし、24年パリ五輪代表選考で重要な来年5月の世界選手権(ドーハ)代表に決まった。男子は66キロ級の丸山城志郎(29)=ミキハウス=、100キロ超級の太田彪雅(24)=旭化成=が優勝。女子78キロ超級は五輪女王の素根輝(22)=パーク24=が制し、48キロ級は宮木果乃(17)=修徳高=が初の頂点に立った。
阿部詩が女王の意地を示した。互いに手の内を知り尽くした志々目との決勝。持ち前の豪快な投げ技に持ち込めず、我慢の展開となったが「いくらでも攻めてやる。何分でも戦ってやるという気持ちだった」。延長に入ると、さらに攻勢を強め、指導3つを引き出して8分の熱戦を制した。
10月の世界選手権から約2か月間と調整期間は短かった。実績で頭一つ抜けている状況。今大会を回避しても代表に選ばれる可能性が高かったが「この大会を乗り越えれば、さらなる進化につながる」と早くから出場の意思を固めていた。
2週間前に右膝のじん帯を痛めた。体調不良も重なり、練習も十分に積めなかったことで欠場が頭をよぎった。それでも「ここで立ち向かわないとどうするんだ、という自分の意思が出てきた」と振り払った。不安要素を感じさせない結果を残し、「地力が上がったかな」と胸を張った。
これで年内の大会を終えた。昨年9、10月に両肩を手術した。稽古ができない状態から始まり、4月の全日本選抜体重別選手権は途中棄権。「どうなることかと思った」と不安は募ったものの、7月に本格復帰後は国際大会3連勝。手術を乗り越えて強さは増した。「優勝で締めくくれて、人生の中でも濃い1年だった」としみじみと振り返った。
男女全階級で唯一、今大会での内定条件を満たし、一番乗りで世界選手権の切符も獲得した。「自分の柔道を世界中の方が研究してくると思うので、金メダルを100%取るにはまだまだ実力不足。来年の世界選手権でしっかり優勝して、五輪でも2連覇できるように精進していきたい」。絶対女王は気を緩めることなく、1強時代を着々と固めつつある。(林 直史)