おぼれ死ぬ-マスクの中に水…初代ウルトラマン誕生秘話「光の国を創った人たち」〈14〉

スポーツ報知
「ウルトラマン」のスーツアクターを演じた古谷敏さん(2011年5月9日撮影)

 今年、初回放送から55周年を迎えた人気特撮ドラマ「ウルトラセブン」が、盛り上がりを見せています。10月には「第35回東京国際映画祭」で特別上映され、雑誌などでも特集が組まれるなど、今後1年にわたって様々な関連イベントが企画されています。

 1966年7月、「ウルトラマン」からスタートした「ウルトラマンシリーズ」は、「―セブン」(67年10月~68年9月)と続き、21世紀に入っても、新たなヒーローが、宇宙の平和を守ってくれています。

 スポーツ報知では円谷プロの協力のもと、45周年となった2011年に初代ウルトラマンの誕生秘話を追った連載「光の国を創った人たち」を全20回、掲載しました。続いて12年には「ウルトラセブンを創った人たち」を20回にわたり連載。様々な関係者の証言を元に、永遠のヒーローの実像に迫りましたが、今回、この2つの連載をWEBのみ加筆・修正して再掲載します。

 まずは「光の国を創った人たち」からスタートです。お楽しみください。(毎日正午更新)

 ウルトラマン役―といっても、スーツアクターとしてのオファーを受けた古谷敏。「ウルトラQ」で海底原人ラゴン、ケムール人のスーツの中に入った経験はあるが「しんどい仕事」という印象しか残っていない。当然、断った。

 「息はできないし、前はよく見えないし…。苦しい仕事ってことは分かっていましたから。でも、円谷の方から『もう撮影開始まで時間がない』と、どんどんプレッシャーをかけられましてね。仕方なく『やります』と。でも、一つだけ条件を出したんです。『入っている人間が誰か分からないようにしてほしい』と。俳優としてこの世界に入って、顔も出ない着ぐるみ役者なんて、恥ずかしくってね」

 当時のスーツはダイビング用のウエットスーツに色を塗ったもの。手袋は銀色に塗られた手術用のゴムのものをはめていた。いったん着用すると皮膚呼吸ができなくなり、息も絶え絶えになった。

 「特撮シーンでは、当然、火も怖かったですが、何よりも水がイヤだった。ペスターやギャンゴなどプールで怪獣と戦うシーンのときは、マスクの中に水が入ってきて抜けなくて、息が全くできなくなった。本当に溺れ死ぬと思いましたね」

 台本を見ても面食らった。ウルトラマンのところには何も書いていないのだ。「『怪獣とウルトラマンの戦い、ややあって…』なんて感じですよ。どうすればいいのか分からなくて、監督の言われた通りに動こうとするんですが、スーツを着てしまうと、それができないんです」。悩む古谷に追い打ちをかけるような言葉が、円谷特技プロ(当時)・金城哲夫企画文芸室室長から投げかけられた。

 「子供がウルトラマンを見て『中に人が入っているんだ』と思わせないようにやってくれ、と。要は自分という存在を無にして臨め、ということです」。顔は出ない。自らを無にする―俳優にとっては、これ以上ないほど厳しい注文だった。=文中敬称略=

 〇…ラゴンは「ウルトラQ」と「ウルトラマン」の2度、登場した。「Q」では第20話「海底原人ラゴン」の回で2億年前、地球を支配していた爬虫(はちゅう)類が進化した海底原人とされ、漁師が誤って引きあげた自分の卵を取り返すため、偶然、遭遇した漁師を絞殺したり、家を壊したりと暴れた。「ウルトラマン」では第4話の「大爆発五秒前」で再登場。太平洋に墜落したロケットに積まれていた惑星開発用の爆弾の1個が日本海溝で爆発。その影響で巨大化、凶暴化した―という話だった。

 〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では、有料プランに登録すると「ウルトラマン」がいつでも見放題となっている。また、Prime Video独占配信がスタートした映画「シン・ウルトラマン」を87倍楽しむため「ウルトラマン」特集も同サービス内で展開中だ。

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