国内のプロボクシングを統括する日本プロボクシングコミッション(JBC)のプロテストが29日、東京・文京区の後楽園ホールで行われ、元Jリーガーの山口聖矢(大橋)が受検。合格した。
大橋ジムの大橋秀行会長や井上真吾トレーナー、元日本スーパーフェザー級王者・岡田誠一、元日本&WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者の井上浩樹(大橋)らが見守る中、山口は2ラウンドの実戦練習を披露。「相手がサウスポーで、ふだんとはちょっと違った。もうちょっとできたかなと思う」と振り返った。得意の左フックを決める場面は見せられなかったものの、ジャブやワンツーなど的確なパンチを打ち込んだ。「ワンツーは意識して練習からやっていた。スタミナについても、そんなに苦しくはなかった」と手応えを口にした山口は、見事にテストに合格した。
井上浩は「サッカーをやっていたので、足腰は強い。そこから出すパンチは、もらったらヤバイというのもある。フックは得意なので打てばよく見えるけど、今日は基本をしっかりやろうと話した」という。
山口は1993年9月、神奈川・座間市出身。山梨学院高、関東学院大に進み、北信越リーグのサウルコス福井を経て、J3のSC相模原でDFとしてプレーした。WBA、WBC、IBF世界バンタム級(53・5キロ以下)統一王者・井上尚弥(大橋)とは幼稚園の年少組の時からの幼なじみで、2018年にSC相模原を退団後は実家の自動車整備会社に勤務しながら、井上尚弥や元WBC世界バンタム級暫定王者の弟・拓真、いとことの井上浩らと一緒にトレーニングを行ってきた。19年の英国遠征にも帯同したという。
今年の正月、尚弥から「ボクシングをやってみては」と提案され、真吾トレーナーに相談。大橋会長の了承を得て、ボクサー転向を決めた。「何も分からないことから始めたが、教えてもらったことは楽しさにつながった。下半身の筋肉の使い方とか、まだまだ。(尚弥には)練習を見てくれて、時々アドバイスもくれます。今回も、ジャブ、ワンツーと基本をちゃんとやっていけばいいと言ってくれました」
「1月から始めて、ここまですごい伸び方をしている。イチから始めたボクサーがプロテストまでたどりついた期間は、ウチのジムでは史上最短かもしれない」と大橋会長は期待を寄せた。主戦場はライト級(61・2キロ以下)を考えている。この日の体重は69・5キロだったが、実は今年6月、尚弥がドネア(フィリピン)と統一戦を戦った時に、同じ期間に一緒に減量に挑戦。ライト級のリミットを下回る60・8~9キロまで落としたという。目標を聞かれた29歳は「新人王を目指したい」と言葉に力を込めた。