◆カタールW杯 ▽1次リーグE組 日本0―1コスタリカ(27日・アハマド・ビン・アリ競技場)
元日本代表MFの中村憲剛氏が、0―1で敗れた日本代表のコスタリカ戦を総括した。前半35分の3バック変更が相手を戦いやすくさせたと分析。スペイン戦へ、相手を自由にしない丁寧な戦い方をすべきと提唱した。
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いくつかの誤算が重なった。森保監督は吉田、遠藤、鎌田ら中核をなす選手を初戦から継続起用した一方、先発5人を入れ替えた。FWではフレッシュな上田を起用。勝たなければ先がないコスタリカの出方、初戦の7失点が与えるメンタル面はどうか。日本は相手の状況を把握し、戦う必要があった。5バックを選択したコスタリカは前から守備に来ることなく、90分で勝ち点3を狙う戦いを選んだ。
日本はボールを持てた。奪うことも難しくなかった。この試合のポイントは、コスタリカをどう崩すかに定まったが、形がなかなか見えない。慣れない前線の組み合わせ。ドイツ戦の激闘による心身の疲労なのか、継続起用された選手たちは重そうだった。ナイターからデーゲームに変わった影響があったのかもしれない。
私が感じたのは、選手間で崩しのイメージが共有されていないことだ。スペースがない中で、パスの受け手と出し手の「受けられる」「出せる」の感覚が合わず、ダイレクトパスも少ないのでコスタリカは守りやすかったはずだ。
そして、趨勢(すうせい)を決める瞬間が訪れた。前半35分の3バック変更だ。日本の4―2―3―1は、コスタリカの5―4―1に対し、サイドで2対1、中盤で3対2を作れるかの組み合わせだった。相手と同じ布陣にすることで、等しく1対1になる。ドイツ戦での3バック変更は、守備で役割をはっきりさせたことで流れをつかみ出したが、この試合は逆にコスタリカの守備の役割を明確にさせた。切り札の三笘もウィングバックに入り、4バックよりも低い位置から単騎仕掛けとなった。
結果論になってしまうが、日本から相手の戦い方にハマりにいってしまった印象だ。それでも得点を取り、勝利できればドイツ戦のようにこの試合の采配も称賛されたはずだ。かじ取りは本当に難しいと感じる。
望むような結果を得られなかったことは事実だが、2試合で勝ち点3は想定していた結果でもある。スペインと1次リーグ突破をかけて戦う。1つの起点を消しても、別の起点から攻めてくるスペイン。ドイツは、起点のブスケツ含め全員が丹念に守備をして、交代選手が流れを引き寄せ、ドローに持ち込んだ。一方で、コスタリカは彼を自由にさせすぎた。日本はドイツの戦いを参考にすれば、突破するチャンスが生まれてくる。(元日本代表、川崎MF中村憲剛)