「森保采配と絶妙シンクロ」と絶賛の本田圭佑の解説…トレンド入りの裏にある最先端戦術の知識と現役への嫉妬

スポーツ報知
23日、ドーハのハリファ国際競技場で日本―ドイツ戦の現地解説を担当した本田圭佑

 「ドーハの奇跡」と深夜の列島を沸騰させたカタールW杯での日本代表のドイツ撃破。森保一監督の絶妙の戦術同様、絶賛の声を集めたのが、今回のW杯全64試合を無料生中継する「ABEMA(アベマ)」の解説者として、ドイツ戦を様々に語った元日本代表MF本田圭佑(36)の言葉の数々だった。

 南アフリカ大会、ブラジル大会、ロシア大会でW杯本大会を経験し、日本人初のW杯3大会連続ゴール、アジア人初のW杯3大会連続アシストを達成。W杯3大会連続で得点とアシストの双方を記録した大会史上6人目の選手としても知られている名手の一つ一つのプレーに対する予測が90分の試合中、何度も的中した。

 序盤の伊東純也のクロスに前田大然が右足を振り抜き、ゴールネットを揺らしたもののオフサイドとなったシーンでは、「(攻めは)完璧です。でも、前田さん、ラインを見ないとダメです」と叱責。早い段階から「ドイツは調整不足ですよ。全然(勝ちが)あるかも知れない」、ボールを支配された前半にも「下馬評通りの内容で受け入れるしかないです。力の差はあります。日本からしたら、カウンターで行ける(チャンスはある)ので、とにかく我慢です」と前向きに話した。

 そして、その「戦術眼」がさく裂したのが、絶妙だった森保監督の選手交代に対する「予言」だった。後半開始と同時に久保建英が退き、DFの柱・冨安健洋が投入されると「タケを代えるのは残念ですけど、そうなりますよね」と本田。前半から「5バックにして、3ボランチにすればいいんすよ」と訴え続けた言葉をなぞるように森保監督は冨安の投入で4バックから5バックにシステム変更した。

 後半20分、「堂安(律)さんと伊東(純也)さんを代えて、左利きの選手を置くと、三笘(薫)さんのスペースを使えると思います」と話した直後に堂安が投入され、「予言」通り三笘のドリブルから堂安が華麗な同点ゴールを決めた。

 ことごとく当たり続けるその発言にネットも沸騰。後半には「本田の解説」、「本田圭佑」、「本田さん」のワードがツイッターの世界トレンドで急浮上。神出鬼没のドイツMFに対する「ギュンドアン、うぜえな」、決勝ゴールの浅野拓磨に対するDFリュディガーのバカにしたようなランニングに対する「性格悪いなあ」などの率直な発言の数々もネットを大いに湧かせた。

 そして、歴史的ジャイアントキリングの笛が鳴った瞬間、「とりあえず、まずは落ち着こう」と一言。

 「この勝利は大きいけど、もう一つ勝たないといけないから。あと1個勝てば(決勝トーナメントに)行けるんで。あと1個と思わないといけない」と続けると、抽選の段階から日本を圧倒的不利としていた戦前の見方については「ざまあ見ろですよ」とポツリ。

 「勝てたのはもちろん(森保監督の)采配のおかげなんですけど、気になる采配はあったんで、コスタリカ戦では、その課題をしっかり修正しないと。ドイツが勝ち試合を落としたとも言えるんで、勝った日本はもちろん素晴らしいんですけど、次に向け、しっかり修正してほしいと思います」と話した。

 「一サッカー人としたら、この勝利は歴史的な前進ですよ。優勝経験国・ドイツとしたら、今後は日本をなめてられへんなと思い知らされたと思う」と続けた。

 さらに中継の最後に総括を求められ、「(DFを)5枚にしたところが大きかった。森保さんの采配が今日はすごかったと思います」と評価しつつも「僕はもう切り替えてますよ。森保監督も言っていたけど、一喜一憂している場合じゃないと思う」と冷静に話した。

 そして、この後、なぜ「本田の解説」がこれほど的確なのか。その理由が心底、理解できる一幕があった。

 スタジオ解説の中山雅史さん(55)が「本当は(ピッチにいたかったという)悔しい気持ちでは?」と聞くと、「今日一番、厳しい質問ですね」と絶句した本田は一拍置いて「その通りです」と正直に答えた。

 そう、まだまだ現役として、日本代表の中心として、あのドーハのピッチに立っていたかった―。そんな未練とピッチで躍動する選手への“嫉妬”が、その表情にはかいま見えた。「元日本のエース」は、まだまだピッチでの躍動への渇望を抱え、最先端戦術も吸収し続けているから、森保采配ともシンクロし続けたのだ。

 森保監督と同年代で日本代表の10番も背負った岩本輝雄さん(50)が寂しげな表情を浮かべて、私にこう言ったことがあった。

 「もう、俺が現役だった20年前と今のサッカーは全然、違うんだよ」―。

 日々進化し、名選手でさえも置き去りにするサッカー戦術の進化。だから、岩本さんは解説者として世界の最先端戦術を学ぶため、年間30日以上、スペインに自費で渡航。リーガ・エスパニョーラの試合を何試合も見ることを自身に課していた。

 そして、選手として、解説者としてベストを求め続ける本田はもう先を見据えている。次戦のコスタリカ戦に向け、「勝てましたけど、内容はいいとは言えない。次のコスタリカは同じくらいの実力なんで、引いてカウンターを狙ってくると思う。逆に攻められてしまう懸念があります」と冷静に話したのが、その証拠だ。

 中継の最後を「ワインがあったら、もっと面白くいけますよ。飲酒解説OKにしましょうよ。常識を変えましょう」と笑顔で締めくくった本田。今回、「ABEMA FIFA ワールドカップ 2022 プロジェクト」の GM(ゼネラルマネージャー)を務めている本田は日本代表のグループステージ全3試合と準決勝・決勝の試合を現地から解説することになっている。

 どこまでもサッカーに貪欲な大物中の大物が、徹底的に分析して臨むW杯解説が面白くないはずがない。壮絶なジャイアントキリング同様、その90分間の絶妙解説を心から堪能した私は今から27日のコスタリカ戦で、その口からどんな言葉が飛び出すのか。それが楽しみで仕方ない。(記者コラム・中村 健吾)

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