国歌歌合わぬイラン、片膝つくイングランド…W杯が世界に与える影響を記者が見た

スポーツ報知
イングランド代表(ロイター)

◆カタールW杯 ▽1次リーグA組 セネガル0―2オランダ(21日、ドーハ・アルスママ競技場)

 【ドーハ(カタール)21日=井上信太郎】B組では優勝候補のイングランド(FIFAランク5位)が、イラン(同20位)に6―2で大勝し、好スタートを切った。イングランドが片膝をついて人種差別への抗議を示したり、イランが政府に対する抗議として国歌を歌わないなど、異様な雰囲気となった現場を井上信太郎記者が「見た」。

 スタジアムにイランの国歌が流れ始めた時だった。記者席の横に陣取ったイランサポーターの大群が「わーっ」と地鳴りのような大声で、国歌をかき消した。ピッチに目をやると、肩を組んだイランの選手たちは口を真一文字に結び、誰一人歌おうとしなかった。

 イスラム体制下のイランでは、髪を隠すスカーフのかぶり方が不適切だとして当局に拘束されたマフサ・アミニさん(22)が9月に急死。これを受けて政府に抗議するデモがイラン国内で続いており、国民から代表選手がデモに連帯を示すことへの期待が高まっていた。

 直接結果に影響したとは言えないが、試合には2―6で大敗。ケイロス監督(69)は「このW杯で、選手たちに彼らの責任ではないことをやれというのはおかしい。プレーに集中させてほしい。国民に誇りと喜びをもたらすためにここに来た」と代表を取り巻く現状を悲しんだ。

 イングランドは、キックオフ直前に選手がピッチに片膝をつき人種差別への抗議を示した。「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切)」運動の一環で、プレミアリーグでも頻繁に行われている。LGBTQなど性的少数者への差別に抗議を意味する「ONE LOVE」と書かれた主将マークの着用は、当日にFIFAから使用禁止が通達されて断念したが、サウスゲート監督(52)は「若い世代にメッセージが伝わると信じてやっている」と話した。

 試合ではイングランドの21歳FWサカが2得点をマーク。昨夏のイタリアとの欧州選手権決勝。当時19歳だったサカは、PK戦で5人目に登場して失敗。初優勝を逃し、SNSで人種差別の標的になった。「家族や友人をはじめ、国全体がサポートしてくれた」。そこから立ち直り、自身初のW杯でチームをけん引。結果で差別に対する“抗議”を示してみせた。

 記者にとって初めてのW杯取材となったこの試合。W杯がいかに世界に与える影響が大きいかを感じた。

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