「霊媒探偵・城塚翡翠」での「最終話」騒動で感じたドンデン返しミステリーを原作にする難しさと日テレの挑戦

スポーツ報知
ドラマ「霊媒探偵・城塚翡翠」主演の清原果耶

 13日に放送された日本テレビ系連続ドラマ「霊媒探偵・城塚翡翠」(日曜・午後10時半)の第5話が内容以上に、その連続ドラマとしての“仕掛け”でネット上を騒然とさせた。

 清原果耶(20)が主演。瀬戸康史(34)、小芝風花(25)、及川光博(53)らが脇を固めた話題作。主人公の城塚翡翠(清原)は犯人が視える能力を持つ霊媒師だが、その霊視には証拠能力がない。ある日出会った推理作家・香月史郎(瀬戸)の頭脳を武器に「霊視×論理」を組み合わせて事件の真相を明らかにしていくという物語だが、6日放送の第4話後に公開された予告が一騒動を巻き起こした。

 第4話で翡翠は「透明な悪魔」こと女性刺創連続殺人事件の犯人によって、妨ぎようのない死が自分の身に近づいていることを予感。香月はなんとかそれを防ごうとするも、翡翠は運命は変えられないと、死を受け止めようとする。そんな中、鐘場警部(及川)の不穏な動きに気づいた香月は彼こそが「透明な悪魔」だと推理。ついに直接対決の時が訪れたという物語に続いて放送された予告で13日の放送回が「最終話」とされたのだ。

 プライム帯の連ドラが5話で終わりという前代未聞の事態にネット上では「え、もう終わりなの? 打ち切り? 早過ぎないか」、「もう終わり? 打ち切り? 早過ぎるから始めから5話設定なのか」などの戸惑いの声が相次いだ。

 原作を読んでいる一部ファンから「最終回ではなく最終話です」という意味深長な書き込みがあった通り「最終回」ではなく「最終話」だったのがミソ。視聴者が騒然とする中、「本当の悪魔は誰だ? この最終話、ネタバレ厳禁」の副題のもと放送された第5話では「透明な悪魔」の正体が初回から主人公的立場で物語を牽引(けんいん)してきた香月だったことが明かされ、4話までの翡翠の霊媒ぶりもすべて香月を追い詰めるための演技だったことが描かれた。

 冒頭7分で香月が別荘に連れ込んだ翡翠を襲い、真犯人だったことが判明。ナイフをちらつかせる香月に最初は怖がる振りをしていた翡翠の人格が突如、一変。こらえきれずに爆笑すると「私はただの詐欺師であり、奇術師ですよ」と正体を明らかに。「最初からあなたの化けの皮をはがすのが目的でした」と香月に言い放ち、過去3件の事件もすべて霊媒師として透視したわけでなく、シャーロック・ホームズばりの推理力で真相を突き止めていたことを明かした。

 「透明な悪魔」香月も呆然の翡翠の豹変ぶりにネット上には「最初から全部、だまされていたわ」、「設定自体、否定してきた。これはとんでもないドラマだな」、「マジ? 新しいパターンだな」というドラマの設定自体への驚きの声が殺到。お嬢様風だった人格を一変させ、「テヘペロ」、「困ったちゃんですね~」などの挑発的な言葉を口にしながら40分以上に渡って過去の3つの事件の真相を語り続ける清原に「果耶ちゃんの演技力が爆発している!」、「果耶ちゃんの長ぜりふ、すご過ぎ」、「翡翠役が果耶ちゃんで良かった」などの称賛の声も集まった。

 一方で「瀬戸君、5話で退場は寂しい…」、「瀬戸康史のぜいたく過ぎる使い方。だますためとは言えすごい」などの声もあった。

 放送の最後には20日からは「invert 城塚翡翠 倒叙集」として清原主演の“新ドラマ”として続編が放送されることが発表された。1クール中に同一主人公による新ドラマが放送されるのは連ドラ史上初の試みとなる。

 原作小説を読了の方はご存じの通り、「invert―」は5話までの原作となった2019年9月に出版された相沢沙呼さんのミステリー「medium 霊媒探偵城塚翡翠」(講談社刊)の続編。今年9月には第3弾「invert 2 覗き窓の死角」も出版されている。

 今だから言おう。放送開始時からファンの間で「原作既読勢」と「原作未読勢」に分かれた今回の作品。ここまでリアルタイム視聴し続けた私も本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい! 2020年版」1位、「2020本格ミステリ・ベスト10」1位、Apple Booksの「2019年ベストブック」ベストミステリー、「2019年SRの会ミステリーベスト10」1位の5冠を獲得した本格ミステリー「medium」を3年前の刊行直後に手に取り、一夜で読み終わっていた。

 当然、香月が真犯人であり、最後に翡翠が人格を一変させ、香月を「最低下劣なシスコン野郎」とまでののしり追い詰めることを知っていたが、人としてのルールとして、周囲の「原作未読勢」には、じっと黙っていた。当たり前か。

 今回の作品についてもネット上で、多くの「既読勢」は口をつぐんでいたが、ドラマに考察は付き物。中には「考察した結果、香月が真犯人では?」などの推理を披露するドラマ好きも登場した。

 原作で描かれた物語の全体像を描かず、いわば視聴者も“だましている”状態で放送し続けたためか、1話から4話は視聴率も低迷。第1話が世帯平均6・4%、個人3・6%、第2話は世帯平均4・8%、個人2・7%、第3話は世帯平均5・1%、個人2・7%、第4話は世帯平均4・9%、個人2・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。

 それでも、私は相沢さん自身も脚本に参加した今回のドラマの挑戦に作り手の大いなる勇気を感じた。

 それほど、今回のような本格ミステリーを映像化するのは難しい。ただでさえ、原作を既に読んでいる視聴者を楽しませるのが難しい上に原作小説自体が限定されてしまう。最後のドンデン返しやフィニッシングストローク(最後の一撃)で読者を仰天させるミステリー小説に歌野晶午さんの「葉桜の季節に君を想うということ」、殊能将之さんの「ハサミ男」、我孫子武丸さんの「殺戮にいたる病」などがあるが、これらはいずれも映像化不可能な作品だろう。大ベストセラーとなった乾くるみさんの「イニシエーション・ラブ」の映画化も決して成功したとは言えない。

 だからこそ、今回の日テレの第5話まで徹底して視聴者をだまし続ける挑戦がとても貴重なものに思える。何より、翡翠というキャラクターに抜群の説得力を持たせることに成功した清原果耶の抜群の演技力。表情をクルクルと変えての40分以上のほぼ一人語りの推理シーンを見た時、私は、この20歳の女優にすっかり魅了されていた。(記者コラム・中村 健吾)

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