元外交官で自民党の松川るい参院議員(51)が初の著書「挑戦する力」(飛鳥新社、1650円)で自らの半生をつづった。悩み抜いた外交官から政治家への転身の舞台裏など、「睡眠不足になりながら」書き上げたという。学生時代の思い出、外交官としての職務、「小さい頃は夢にも思わなかった」という政治家としての仕事…。安全保障など外交分野で存在感を発揮する松川氏の飾らない姿が描かれている。(久保 阿礼)
朝から夜まで忙しい毎日を送る。さまざまな会合に出席し、週末は地元の大阪へと戻り、支援者へのあいさつ回りなどをこなす。多岐にわたる陳情を受け、視察や政策の勉強会に出向く。肌感覚では「政治家は小規模事業者の社長」。スケジュールは瞬く間に埋まっていく。大学の先輩だった夫、長女、次女の4人家族。外務官僚時代より不規則な生活になった母を支えてくれる。
小さい頃は目立つのが嫌だった。名前は当時としては珍しい「るい」。からかいの対象になったこともあり「なぜ○○子ではないのか」と不満に思ったこともある。四天王寺中、高(大阪府)へと進学し、東大法学部に進んだ。「初めての一人暮らし。天国でした。何時に帰宅してもいいですから」。英語、韓国語など語学が好きで国際政治に関心があった。外務省に入省し、国際裁判のほか、アジア諸国との自由貿易協定(FTA)交渉を担当するなど順調にキャリアを重ねた。「ずっと外務省で働くと思っていました」
転機は2015年11月。安倍晋三首相(当時)が主催する世界中の女性リーダーが集う国際会議を室長として成功させた。その後、森雅子参院議員から電話があった。「打ち上げをやりましょう」。顔を出すと、世耕弘成官房副長官(当時)から翌年に控えた参院選の打診を受けた。「もう44歳で子供も小さいです。この仕事が好きなので」。断ったつもりだったが、「なぜか継続審議になった」。
「人生で一番悩んだ」という3か月。周囲に相談し、夫は反対したが、最後は背中を押してくれた。「外務省には私以外にも優秀な人がいる。政治家はなろうと思ってなれる職業ではないから」。16年参院選大阪選挙区から立候補し、トップ当選。今夏の参院選でも2位になった。日本維新の会が圧倒的に強い地盤だが「維新と互角以上に渡り合える」と言われる。
外交官と政治家。どちらにも重要な役割があると実感できる。「政治の世界で外交の現場を知っている人間がいてもいいかな、と。物事の動かし方が少し分かってきましたし、仲間といろいろ一緒に変えられます。やりがいのある仕事だと思っています」
◆松川 るい(まつかわ・るい)1971年2月26日、奈良県生まれ。51歳。東大卒業後、外務省入省。ジョージタウン大大学院修了。条約、国際裁判、国際情勢分析などを担当。16年参院選(大阪選挙区)で初当選。防衛省政務官などを歴任。今年の参院選で2選。安倍派。