13代目市川團十郎、唯一無二の孤高感にスター性 孤軍奮闘弁慶役がよく似合う…歌舞伎担当が見た

スポーツ報知
「勧進帳」の弁慶役で見得(みえ)を切る市川團十郎(c)松竹

 現在、東京・歌舞伎座では市川海老蔵改め13代目市川團十郎白猿(44)の襲名披露と長男・8代目市川新之助(9)の初舞台となる公演「十一月吉例顔見世大歌舞伎」(28日・千秋楽)の真っ最中だ。今月の「GREAT!歌舞伎」では、さっそく全演目をチェックした世代の異なる3人の「見た」で構成。普段の取材経験を通しての目線、感じ方、成田屋への思いは実に三者三様。襲名披露は演目、出演者を代えて12月も同劇場で行われる。

 新團十郎には襲名が決まった2019年から3年間で10回以上、インタビューを行った。その度に歌舞伎俳優としての本音、人間・堀越寶世(たかとし)の素顔に迫ろうと質問をぶつけ、胸の内を探ってきた。

 豪快に見えて繊細。警戒心が強く安易に心を開かない。雄弁だが、不器用で本音を伝えるのが苦手。それによって誤解を招くこともある。父の12代目團十郎、妻の小林麻央さんが天国へと旅立ったこともあり、團十郎には孤高感を感じる。それが役者としての華であり、舞台で輝くスター性でもある。

 息子の新之助は、9歳の少年ならではの無邪気さだけでなく、母・麻央さんの影響なのか、陽気なエネルギーに満ちあふれている。親子でありながら対照的な性格が面白い。それが演技にも反映されているように感じた。

 観劇は初日の7日。歌舞伎座の正面玄関には三升の紋が入った幕が掲げられ、襲名披露ならではの成田屋仕様に。1760人の「満員御礼」でロビーに人がごった返し、関係者が「これほどのにぎわいは、いつ以来だろう?」と語るほど、お祭りムードに包まれた。

 「勧進帳」の弁慶は主君の義経を命懸けで守る。市川宗家の重責を担い孤軍奮闘する、孤高の團十郎に似合う役どころだ。荒事では珍しく、弁慶は隈(くま)取りをしない。そのため、表情の変化が分かりやすく、心情が伝わりやすい。勧進帳の読み上げ、富樫との山伏問答では、あえて伏し目がちで冷静さを保つ。その後の見得(みえ)は力強く、引っ込みの六方は鬼気迫る表情で決死の覚悟が伝わってきた。

 新之助は天性の愛されキャラだ。「外郎売(ういろううり)」では史上最年少の9歳で主人公の外郎売、実は曽我五郎を演じた。花道からの登場前に鳥屋の奥から声が聞こえるだけで、雰囲気が和む。工藤祐経役の尾上菊五郎(80)ら先輩俳優が見守る中、約3分に及ぶ早口の言い立てを披露すると、会場が一体となり、新星の誕生を歓迎した。観客の視線を一身に集める新之助には、その空気を楽しむ余裕さえも感じられた。

 團十郎は、海老蔵時代に「花の海老さま」として空前のブームを起こした祖父の11代目團十郎に似ていると言われ、本人も「隔世遺伝」と語る。新之助の愛きょうも、おおらかな人柄で愛された12代目團十郎の「隔世遺伝」なのか。先代や先々代の面影をしのぶことも歌舞伎の楽しみ方の一つだ。新之助が、12代目が得意とした「毛抜」の粂寺弾正に挑戦する12月公演も期待したい。(有野 博幸=43歳)

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