【相撲のウラ道2】鉄人・玉鷲から受けた“お説教” その本音からにじみ出る人柄

スポーツ報知
大相撲秋場所で2度目の優勝を果たし、パレードで手を振る玉鷲(左は輝)

 九州場所が始まる直前に先場所優勝の玉鷲のことを書いておきたい。彼を最初に直撃したのは両国ではなく空港だった。実は相撲記者は空港取材も意外と多い。モンゴル出身の力士が頻繁に里帰りしており、なぜか引退した元横綱・朝青龍も来日してくることが多かった。

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 玉鷲のときも例にもれず羽田空港で再来日を待ち受けた。聞けば第1子が生まれ、「モンゴルの祖母に孫を会わせてきた」という理由で里帰りしていた。到着便が夜でしかも1時間半も遅れた。待ちくたびれたときに到着ゲートから現れ、“出待ち”取材に驚いた顔を見せていたが、「うれしかったよ」と後日打ち明けられたことがある。その縁もあって積極的に取材していたのだが…。

 2017年の春場所だった。不戦勝となった玉鷲に軽い気持ちでコメントを聞きに近づいた。すると開口一番、こう言った。

 「力士が30人いたら20人は君のことを嫌いだよ。(相撲界は)狭い世界だからね、気をつけないとやっていけないよ~」

 日頃から囲み取材では“いじられて”いたこともあり、冗談交じりの口調で諭されたが真意は理解できていなかった。

 後日、巡業で話し込むことがあって発言の意図が分かった。一言でいえば「質問が下手」ということだった。「負けたときもストレートに聞きすぎ。こっちは土俵に生活をかけている。いい部分を見つけながら質問しなさい」と諭された。そう言われたら思い当たる節はある。ただ続けざまに説教を重ねないのがこの男のいい所。その後は私の身なりについてツッコミが入った。

 「だいたいコーディネートがなってない。ジャケットを着ているのにショルダーバック、おかしいでしょ。それから俺に話を聞きたいなら髪にワックスをつけて整えてから来なさい」。モンゴルの学生時代はホテルマンを目指すために、大学で観光について学んでいただけのことはある。他人の身なりにも厳しかった。予想外の長い話…。巡業の支度部屋で自然と正座する私と腕を組んで訓示を述べる玉鷲関という構図ができた。後で他の力士から「説教部屋だったね」とからかわれたことも思い出す。

 このくだりは2019年の初場所で玉鷲が初優勝した際に、こぼれ話として紙面に書いた。今回、書いておきたいと思ったのは、37歳10か月で2度目の優勝を果たしたタイミングでウキペディアを検索すると、私が受けたお説教の件が記載されていたから。懐かしいなと思いつつ、当時のやりとりを思い出させてくれた彼の偉業に改めて敬意を表したい。

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