なぜ「主婦叩き」は起こる?専業主婦の労働は“年収1300万円超”という意見が話題…大学教授が原因を解説

スポーツ報知
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 たびたびネット上での「専業主婦叩き」が話題となっている。また、専業主婦に限らず「兼業主婦叩き」もしばしば目にする。なぜ「主婦叩き」は起こるのか? 摂南大・堀田裕子教授(現代社会学部就任予定)に話を聞いた。

■専業主婦は年収1300万?

 10月17日夜にも、ツイッターで「専業主婦」がトレンド入り。あるユーザーが専業主婦の家事・育児などの労働が「時給1500円」に値し、「24時間休む暇がない」、年収に換算すると「1314万円」の価値になるとし、「専業主婦叩きはおかしいです」という趣旨のツイートをし、これに賛否が寄せられた形だった。

■「主婦叩き」の歴史は長い

 こうした「主婦叩き」現象は最近急に現れたものではなく、昔からたびたび勃発している“主婦論争”のなかでも起こってきた。「主婦論争は論点を変えつつも繰り返されている」と堀田教授は話す。「最初に起こったのは1955年。主婦業は外で働くことに加えて行われるべき第二の職業にすぎないという主張に始まった。家事・育児は女性がすべきとするその前提には時代を感じるものの、現代の『主婦叩き』に共通する部分も多い」と説明。

 60年代には家事労働の経済評価をめぐって主婦論争が。今は財産分与の際に実務上は「1/2ルール」が適用され、家事労働の価値が認められるようになったといえるが、当時はされなかった。70年代になると、生産労働に従事する人間よりも「生活人間」である主婦の方が人間らしく生きていると主張する専業主婦肯定論(「主婦こそ解放された人間像」)が登場したことで再び論争が起こる。80年代末には、子連れ出勤の是非を問う「アグネス論争」が起こったことも記憶に新しい。こうした主婦論争は、第六次まで起こっていると整理する論者もいる。

■現在はSNSで「叩き」に広がり

 現在のSNS上の「主婦叩き」は、著名人だけでなく、匿名で気軽にそして、なかば感情的に意見する人びとによっても広がりを見せている。たびたび“専業主婦叩き”の材料として話題になる第3号年金については、「106万円の壁や130万円の壁を意識してパートタイム労働をしている兼業主婦の場合もあるし、なかには男性も。基本的には、基礎年金がもらえるだけでそんなに多額ではなく、厚生年金に加入し働いてきた人の方がもらえる。とくに今年10月、社会保険の適用範囲拡大に伴い106万円の壁にぶつかる人が現れ、年金制度見直しの議論で保険料の支払期間を延長するという案も出るなか、保険料を直接支払っていない人びとに批判の矛先が向かっているのだろう。しかし“叩き”の対象になるのが女性(専業主婦)というのは、必ずしも数の問題ではないのでは」と堀田教授は話す。

■「叩き」が起こる原因

 ネット上では、“叩く”人の年齢や性別、職業などもわからない。堀田教授は「叩いている人は相手に、選ばなかったもうひとつの自分の人生を映し出しているのかもしれない。今が自分自身の選択の結果ではない人もいる。自分で選んだ結果だけどこんなはずじゃなかったという人もいる。そうした不満が“叩き合う”状況をつくり出すのだろう。“叩く”“論破する”前に立ち止まって、言葉の向こうにある多様化した他者の生を想像することが必要だと思う。たとえば同じ『フルタイムの共働き』であっても、生活の内実はまったく違う。人間の生はいつでも想像を超えてくる。そのことは前提としつつも、想像することをやめてはいけないと思う」。

■「主婦」表現が時代遅れに

 そのうえで、「家事、育児は誰かがやらなきゃいけないこと。主婦業は女性がやることという認識がまだあるが、兼業主夫だっている。フルタイムで働く女性のなかにはそもそも自分が『主婦』だと言うことに違和感を覚えている人もいるし、家事と育児を完全に夫婦で役割分担しており、どちらが『主』かを問うことができない場合もある。『主婦(夫)』などという表現が時代にそぐわなくなってきているように思う。そうした言語感覚と身体感覚は、次の世代へと引き継がれていく。あらゆることを性別によらず選択できるようになること、そのために次世代も見据えて、制度・政策の変革を待つだけでなく日常生活から変革していくことも大切だ」と話した。

 ◆堀田 裕子(ほった・ゆうこ) 摂南大教授(現代社会学部就任予定)。東京外国語大卒業後、名古屋大国際開発研究科で修士(学術)、同大学人間情報学研究科で博士(学術)の学位取得。専門社会調査士。愛知学泉大学現代マネジメント学部教授などを経て現職。専門は身体の社会学、ジェンダー研究、ビデオ・エスノグラフィー。

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